◆金閣寺 ~三島由紀夫
私は、生来の吃音で、自分自身をうまく表現することができず、いつも疎外感に悩んでいた。体も弱くて、ますます引っ込み思案になるばかりだった。その分、空想を楽しむというところがあった。父に金閣の美しさを聞かされ、見たこともない金閣を現実以上に偉大で美しいものととらえていた。
やがて金閣の徒弟となった私は、金閣と同じ世界に住むことを願い、もろい私の肉体と同様に金閣の美も滅びる、金閣が空襲の火に焼け滅ぼされるという幻想を抱いた。しかし、戦争が終わり、私は金閣との関係を絶たれたと思い絶望する。金閣の幻影に苦しみ、ついに金閣を支配するために放火することを決意する。