高等中学の生徒、間寛一は、お金のために許婚者の鴫沢宮をうばわれたことを知り、絶望の果てに冷酷な高利貸となって、カネの力で宮や世間に復讐しようとする。宮は資産家と結婚後、はじめて自分への寛一の強い愛を知り、悔悟にくれ、寛一に許しを請う手紙を書きつづる。一方、寛一もさまざまな体験を経て、また親友の忠告も受けいれ、塩原で情死しようとしていたお静らの純愛にも胸を打たれる。こうして、寛一の心にもようやく宮への同情がめばえ、宮の手紙を読むようになった。
(作者が病死したため、この小説はここで終わっているが、のち、小栗風葉が『終編金色夜叉』を書き、完結させた)。