◆野菊の墓 ~伊藤左千夫
おもな舞台は、千葉県松戸に近い矢切村。旧家の子供・政夫は、家事手伝いにきた2歳年上の従姉の民子と親しくなる。しかし、年ごろの娘であり、周囲の人間も心配したり妬んだりで、母もまた気にかけて二人に注意したりする。ある秋の日、二人は家の用事で綿摘みに出かけて二人だけの時間を過ごす。しかし、帰りが随分遅くなったため、怒った母は政夫を東京の学校の寄宿舎に早めに帰し、民子は自分の家へ帰される。民子は強いられて他家に嫁に行き、流産で命を落としてしまう。死んだ民子の左手には、紅絹(もみ)のきれに包んだ政夫の写真と手紙が堅く握られていた。民子の墓の周りには、好きだった野菊の花が茂っていた。