それは、とても簡単で、素晴らしいことだった。
ホテルを出てから、それまでとはうって変わってぼくたちは元気になってしまい、夜の街をよくしゃべって、よく歩いた。
あの県のスポーツセンターの夜にもどったみたいだった。あのときは三人でだったけれど。
近くに住んでいて、いつもこんなふうに伊田さんに会える中沢が少しうらやましい気がした。
それで、
「電話して、中沢も呼び出そうか」
って、ぼくは提案した。
ショーウィンドウの前で立ち止まった伊田さんは、ちょっとの間、ぼくの顔を見てから、
「変なやつだね」
と、言った。
でも、ぼくは本当に、あの夜のように、三人で楽しめるような気がしたのだ。なんならホテルのベッドの上でだって?