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クライマーズ・ハイ52

时间: 2018-10-19    进入日语论坛
核心提示:     52 編集局の大部屋は、丁度、朝日が射し込んだところだった。 佐山が応援を呼んだということだろう、合わせて七人の
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 編集局の大部屋は、丁度、朝日が射し込んだところだった。
 佐山が応援を呼んだということだろう、合わせて七人の局員が電話に齧りついていた。『こころ』担当デスクの稲岡も早出していた。驚くほど活気に満ちた表情だった。依田千鶴子の姿もあった。佐山の隣のデスクで、長い髪をかき上げながら懸命に口をぱくつかせている。
 佐山と目が合った。手で挨拶を交わし、デスクに近寄って手元のコピー用紙を覗き込んだ。
『北関は不偏不党、公正中立を旨としており、世の中に開かれた新聞です。いかなる立場の意見も尊重し、封じることなく県民にお伝えするのが使命です』
 稲岡が即興で作った一文だろう。コピー用紙の隅に、「正の字」の書き込みがしてあった。佐山一人で八件の抗議電話を受け付けたということだ。
 千鶴子の用紙に目を移した。こちらは六件。ならば全体では、既に五十件ほどの抗議電話が寄せられているとみてよさそうだった。
 遺族からはどうか。佐山に尋ねる間もなく、右手のデスクの電話が鳴り出した。
 悠木は胸からボールペンを取り出しながら受話器を上げた。
〈どういうんだい、北関は!〉
 嗄《しやが》れた男の声が鼓膜を打った。実際に読者の怒りを耳にしてみて、しかし悠木の気持ちは奇妙なほどに落ちついた。
「何の件でしょう?」
〈決まってんだろ。『こころ』だよ。何であんなの載せるんだよ。ひどすぎらあ。遺族がかわいそうだろうが!〉
「これも一つの意見だと思って掲載しました。人の命について考えさせられる真摯な投稿だと考えています」
〈じゃあ、何だって名前が書いてないんだよ。二十歳の学生としかわからないじゃないか。これは明らかな悪意だよ。そんなふざけた投書を載せちまっていいのかよ!〉
「こちらは書いた人間をきちんと把握しています。極めて真面目に書かれたものです」
〈馬鹿野郎、北関は地元紙だろ! 遺族は辛い思いをしてこっちに来てるんだろうが。俺は恥ずかしいよ。申し訳なくて仕方ない〉
「……地元紙だからこそ載せました。ご理解下さい」
 手の空いた佐山がメモを差し出した。
 遺族──ゼロ。
 救われた思いがしたが、嗄れた声が鎮まることは最後までなかった。
〈そうかい、わかったよ! 北関はもうやめる! こんな最低の新聞、金輪際読まないからな!〉
 善意の読者に違いなかった。購読打ち切りの宣告は、だから悠木の胸を苛《さいな》んだ。
 切っても切っても電話は鳴った。
 騒ぎを察知したらしく、八時近くになって、粕谷局長と等々力社会部長が相次いで姿を現した。ともにゆうべは財界人との宴席に出席し、局に不在だった。追村次長から「悠木がきつい投稿を載せる」との電話連絡を受けていたが、まさかこれほどの内容とは、というのが本音のようだった。追村の計略だったのかもしれない。投稿の内容を暈《ぼか》して伝え、二人に深刻な危機感を抱かせなかった。
 その追村は九時前に一度顔を出したが、すぐに大部屋から消えた。デスクの岸と田沢も早出してきた。飯倉専務や白河社長も出社している。そんな噂が抗議電話の合間に伝わってきていた。
 ベルの音が途切れがちになったのは十時を回ったころだった。
 悠木は抗議件数を集計した。全部で二百八十三件。一昨年の総選挙で、候補者の顔写真を取り違えた時に次ぐ異例の数だった。
 遺族からの抗議は一件もなかった。
 だが、もはや悠木はそのことを喜ぶ気にはなれなかった。読者の怒りは真っ直ぐなものばかりだった。正論であるその怒りの声を何度も何度も聞かされているうちに、望月彩子の一文を載せる決断をした時の気持ちすら思い返すのが難しくなっていた。
「悠木──」
 粕谷局長の巨体が近寄ってきた。おろおろしているのがわかる。
「社長が来てるらしい」
「聞きました」
「おそらく飯倉が乗り込んでくるぞ」
「私の口から説明します」
「やりすぎたな、今回は」
 庇いきれないぞ。そう聞こえた。
「まあ、遺族からの抗議がなかったのが、せめてもの救いってところだな。まだわからんが」
「おそらくないと思います」
 悠木は言った。声に願望が滲んだのが自分でもわかった。
「悠木さん、電話です」
 声に振り向いた。千鶴子が受話器を胸に当てていた。その顔が昨日来客を取り次いだ時とよく似ていたから、すぐに相手がわかった。
 悠木は早足で歩いて受話器を受け取った。
「悠木ですが」
〈……望月です〉
 彩子の声は消え入りそうだった。
「どうした?」
〈読みました、私の書いた投書……〉
「ん」
〈私……とんでもないことを……遺族の方に申し訳なくて……本当に申し訳ないことをしてしまって……〉
 遺族のためには泣かないと書いた、その彩子が泣いていた。
 悠木は眠りから覚めたような思いにとらわれた。
 彩子にそう言わせたかったのかもしれない。呪縛から解き放たれたその言葉を聞きたくてあの一文を載せた。彩子の心を救うためではなく、望月亮太を死に追いやった自分の魂を救いたくて、だからあれほど掲載にこだわった──。
 悠木は天井を仰いだ。
 胸の痛みは尋常ではなかった。彩子の涙をとめてやりたかった。ただもうそれだけを思った。
「遺族の人は誰も何も言ってきてない」
〈………〉
「わかってくれたんだと思う」
〈でも……私……謝りたいんです。遺族の人たちに〉
「だったらまた書けばいい」
〈えっ……?〉
「そうしたらまた載せる」
〈本当ですか〉
「約束する。必ず載せる」
 噛みしめるように言った、その時だった。局員の顔が一斉にドアに向いた。悠木も釣られてそうした。
 大部屋に車椅子が入ってきた。
 飯倉専務ではなく、白河社長が直々に局に乗り込んできた。
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