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黒田如水22

时间: 2018-11-15    进入日语论坛
核心提示:深夜叩門一 藤吉郎秀吉《ひでよし》は、北《きた》近江《おうみ》の小谷《おだに》の城から一小隊の部下と、小荷駄《こにだ》す
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 深夜叩門
 
 藤吉郎秀吉《ひでよし》は、北《きた》近江《おうみ》の小谷《おだに》の城から一小隊の部下と、小荷駄《こにだ》すこしを率《ひき》いて、きょう岐阜に着いた。
 長篠《ながしの》に捷《か》つやいな、次は、越前へ出兵だとは、ほとんど、公然のような岐阜の空気であった。機微《きび》の謀は、秘し得ても、万人が万人とも感ずるところのものは、滔々《とうとう》たる潮の勢いにひとしく、これを世人の耳目《じもく》から蔽《おお》うことはできなかった。
「いや、宿舎へ向うのではない。このまますぐご本城へ上るのだ。……荷駄の者だけは、わかれて宿舎へ行っておれ」
 辻の一角で、馬上から部下へ、こう怒鳴っているのが藤吉郎秀吉だった。浅井家滅亡ののちは、小谷の城主に置かれ、地位声望いよいよ重きを加えていた彼であったが、年はまだ三十九歳、体は至極小ぢんまりで、きらきらする眼とてもそう威厳《いげん》のあるものではなく、顔はこの炎天に赭黒《あかぐろ》く焦《や》けて、それと知る者でなければまず兵百人持ぐらいな一将校としか思われない風采《ふうさい》であった。
「なに、戻るのか」
「戻れ戻れ。荷駄はそのまま」
 当然、ここへ着いたら、何より先に、宿所へ行って、汗もふき、体も休め、今夜ぐらいは、ゆっくりするものとばかり合点していたらしい部下たちは、秀吉のことばを、また更に、下の将が伝えて、曲りかけた道を急に戻れと命ぜられたので、一瞬、そこの辻は、馬の汗と、人の汗のにおいで、ただならぬ混雑をしていた。
 すると、秀吉のわきにいた、騎馬の小姓が、ふいに槍をうごかして、ぴたと往来の一方へつけ、
「こらっ、何しに寄るっ」
 と、甲高《かんだか》くさけんだ。
 すこし先の商家の軒下から頃をはかって秀吉の駒のわきへ駆け寄って来た男があったからである。が、男は何らの武器も手にしてはいない。目薬売りの荷と笠とを負っているだけであった。で、ほかの諸将も一斉に地上へ目を向けただけで気の早いことはしなかった。
「決して不審《ふしん》な者ではございませぬ。主人の使いに、折ふしのご通行を、今朝からお待ちうけしていたもの。どうか、主人のこの一書を、お取次ねがいまする」
 彼の手に、書簡が見えたので、徒歩《か ち》の武士が、取って馬上の一将に渡した。
(いかに計《はか》らいますか)
 と、眼で問うようにその将は秀吉を振向いたが、秀吉はもう馬の鬣《たてがみ》へすこし半身を出して手をのばしていた。
 簡略《かんりやく》な内容とみえ、一目に読んで、秀吉は、直後、衣笠久左衛門を見て答えた。
「晩に来いと申せ」
 久左衛門は狂喜して、
「では、こよいにも」
「ちと遅くなってもよい」
「ご宿所は」
「たれに問うてもすぐ知れよう。この町の西にある何とかいう寺だったよ。たしか門が赤く塗ってあった」
「はっ……」
 久左衛門が一礼してその頭を上げたときは、もう秀吉の姿をつつむ部下たちの馬埃りが、日ざかりの町を戞々《かつかつ》と出て、稲葉山城の大手のほうへ向っていた。
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