日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 吉川英治 » 正文

松のや露八19

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:夏去り秋来る一 何か、考えごとをしながら、長い夜道を、ぼんやりと歩いて行く。 竹刀の先ッぽに、目録の包みを結びつけ、肩に
(单词翻译:双击或拖选)
 夏去り秋来る
 
 
 何か、考えごとをしながら、長い夜道を、ぼんやりと歩いて行く。
 竹刀の先ッぽに、目録の包みを結びつけ、肩にかついでいる恰好《かつこう》は、狐に憑《ばか》された武者修行とでも見えるのか、野良犬が、後ろから、わんわん吠えた。
「土肥さあん——。土肥さんてば——」
 お茶の水まで来ると、お蔦が、息をきって追いついて来た。
 庄次郎は、水道橋の欄干《らんかん》に、倚《よ》っかかって、無表情な眼で、彼女を迎えた。
「どうなすったの」
「どうもしない」
「お宅は、どちらです」
「小石川……武島町」
「じゃあ、まるで、方角ちがい、近いなら送って行こうと思ったけれど」
「なんの」
 首を振って、深い——真っ暗な——お茶の水の谷をのぞきこんだ。
 お蔦は、体を摺《す》りよせて、庄次郎の顔のそばで、ささやいた。
「また、来てくださいね。板新道の家へ——」
 息が、耳に、熱かった。
「ウム」
「きっと」
「うむ……」
「妹に、気がねなんか、いりやしない。お里だって……ほんとのこというと、榊原《さかきばら》健吉の、お妾《めかけ》みたいなものになってるんですからね」
「あ……そうか」
「一番下のお喜代にだって、いま、旦那の話が持ちあがっているし……淋しいのは、私だけ、私だけが、ひとりぽっち」
 欄干にある庄次郎の手へ、お蔦は、胸を押すようにして云った。乳ぶさのやわらかな肌のぬくみが、うすい単衣《ひとえ》はないように、ぴったり、彼の手を抑《おさ》えつけていた。
 だが、庄次郎は、なぜか、お蔦の髪や肌を感じながら、心では、お喜代の愛くるしい眸《ひとみ》や、唇や、白い顎《あご》を描いて、かすかな水音のする深い闇の底から、あの疋田《ひつた》鹿《か》の子《こ》が、うかび出してくるように、うっとりしていた。
「じゃ、また、そのうちにね」
「あ……」
 庄次郎は、びっくりして、頬へ手をやったが、お蔦の熱い唇は、もうかなたへ飛び離れて、笑っていた。
「左様なら——」
 橋板を鳴らして、彼女は、小走りに、行ってしまった。
「ちッ……」
 袂《たもと》で、頬をこすったが、お蔦のにおいが消えなかった。二十七にもなって、まだ、清童《せいどう》である彼の潔癖が、忌々《いまいま》しげに、
「出戻りの女などに——」
 つぶやいて、腹を立てた。
 そのくせ、しきりと、想いだされるのが、お喜代だった。お喜代になら、毎日でも、会いたい気がしてきた。眸を、どっちへ向けてもお喜代の顔か、帯か、疋田鹿の子かが、闇のなかにちらついて見えた。
「ああ! 馬鹿馬鹿しい——」
 突然、彼は、担《かつ》いでいた竹刀と目録とを、欄干から谷間へ、抛《ほう》り捨ててしまった。そして、何丈か下の水面で、どぼん——と白い光がちらかると、初めて、爽々《さばさば》したように、
「お情け免許め、十三年、俺に無駄をさせやがった。——ざまを見ろ、肥船《こえぶね》の尻にでもついて、流れてしまえ」
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%