[書き下し文]子曰く、臧文仲(ぞうぶんちゅう)、蔡(さい)を居え(たくわえ)、節(せつ)を山にし税(せつ)を藻(も)にす。何如(いかん)ぞそれ知ならん。
(税(せつ)の正しい漢字は、「のぎへん(禾)」ではなく「きへん(木)」である。)
[口語訳]先生が言われた。『臧文仲は、国君が使う占い用の大亀の甲羅をしまっていたし、天子のように柱の上のますがたに山がたをほり、梁(はり)の上の短い柱に藻を描いた。どうして、それで智者だといえるだろうか?(いや、いえない。)』
[解説]臧文仲は魯国で語り継がれた著名な賢者であったが、臧文仲は明らかに天子(君主)にしか許されていない礼制の制約を破って、自分を天子になぞらえるような越権の振る舞いをしていた。安定した社会秩序を実現する政治にとって、礼制の遵守が一番大切だと考えていた孔子は、幾ら学問に精通した碩学(賢者)だといっても、「礼」を無視するようでは本当の智者とはいえないと批判したのである。