[白文]21.子曰、寧武子、邦有道則知、邦無道則愚、其知可及也、其愚不可及也。
[書き下し文]子曰く、寧武子(ねいぶし)、邦(くに)に道あるときは則ち知。邦に道なきときは則ち愚。その知は及ぶべきなり、その愚は及ぶべからざるなり。
(「寧」の正しい漢字は、「うかんむり」に「心」に「用」と書く。)
[口語訳]先生が言われた。『寧武子は、国に道のあるときは智者で、国に道のないときは愚かであった。その智者ぶりは真似ができるが、その愚か者ぶりは真似ができない。』
[解説]孔子が生まれる前の紀元前7世紀前半、衛の名宰相であった寧武子(ねいぶし)は、衛の君主の座を巡る内乱を収拾した人物として知られる。寧武子は、賢者として抜群の知略を振るうこともあったが、愚者のふりをして空とぼけをすることもあったと伝えられる。そこで、孔子は寧武子の賢人ぶりは真似したいものだが、愚者のふりをしたとぼけた振る舞いはなかなか真似できないと語ったのである。