[書き下し文]子曰く、勇を好みて貧を疾む(にくむ)ときは乱す、人にして不仁なる、これを疾むこと已甚だし(はなはだし)ければ乱せん。
[口語訳]先生がおっしゃった。『勇敢を好む力の強い者が、貧乏な生活を憎めば反乱が起こる。反対に、思いやりや正義のない不仁な人物を強く憎めば、これもまた反乱の原因になるだろう。』
[解説]孔子が、なぜ、戦国の世の中において、臣下が君主を攻撃する反乱が続発するのかについて考えている章句である。孔子は、戦争に自信があり勇敢を好む人物が、貧しさや惨めさを感じる生活環境に置かれると反乱が起きやすいと考えたが、『貧苦・貧困・窮乏』が反乱の主要原因であることを見抜いた点にリアリストとしての見識を感じさせる。また、悪人や乱暴者を強く憎みすぎると、その悪人を打ち倒そうとする欲望が強くなり、再び戦争が起きてしまうということも指摘しており、『それぞれの正義心』こそが戦争の原因になるという相対主義的な視点も持っていたようである。