[書き下し文]牢(ろう)曰く、子云う(のたもう)、吾試いられず(もちいられず)、故に芸ありと。
[口語訳]琴牢(きんろう)が言った。『孔先生は、私は世間(官職)に用いられなかったために多芸になったのだとおっしゃっていた。』
[解説]前の章と関連した部分で、孔子は若かりし頃に就職(官吏登用)に恵まれず経済的にも貧しかったが、それを恥じることもなかったしそれによって腐ってしまうこともなかったのである。過ぎ去ってしまった過去の不幸や屈辱に捕われすぎないということも、『前向きで建設的な人生』を送るために必要なことである。