[書き下し文]子曰く、吾未だ徳を好むこと色を好むが如くする者を見ざるなり。
[口語訳]先生が言われた。『私はまだ、美人を情熱的に愛するように有徳者を強烈に愛するというような人を見たことがない。』
[解説]孔子は、本能的な欲望の対象である『美人(色恋沙汰)』を熱狂的に愛する人は多いが、理性的な思考の対象である『有徳者(仁徳と礼節)』を心から深く愛する人がまだまだ少ないということを十分に知っていた。そのことを嘆きながらも、美人と徳との双方を程よいバランスで愛する中庸の道を模索していたのである。