[白文]21.子見斉衰者、雖狎必変、見冕者与瞽者、雖褻必以貌、凶服者式之、式負版者、有盛饌必変色而作、迅雷風烈必変。
[書き下し文]子、斉衰(しさい)の者を見ては、狎れ(なれ)たりと雖も必ず変ず。冕者(べんしゃ)と瞽者(こしゃ)とを見ては、褻れ(なれ)たりと雖も必ず貌(かたち)を以てす。凶服の者にはこれを式(しょく)す。負版者(ふばんしゃ)に式す。盛饌(せいせん)あれば必ず色を変じて作つ(たつ)。迅雷風烈しき(はげしき)ときも必ず変ず。
[口語訳]先生は官吏の喪服を着た人に出会うと、いつも親しい仲であっても顔色を変えて身なりを正された。麻の冠をかぶった人や盲目の薬師に出会うと、ふだん懇意にしている人でも、必ず表情を引き締められた。軽い喪服を着ていた人には、礼にのっとって拝礼された。戸籍台帳を背負っている人に会っても、礼に従った挨拶をされた。豪華なご馳走をしていただいたときには、顔色を引き締めて態度を改めて立ち上がった。雷雨や暴風は激しいときにも、先生は謹厳な態度をとられていた。
[解説]日常生活で遭遇する相手に対して、孔子がどのような礼の道を実践していたのかを示した章である。自然現象である雷雨や暴風をも敬虔に恐れて態度を正したのは、孔子が『天命思想』に基づいて礼制を守っていたからであろう。