[書き下し文]魯人(ろひと)、長府を為る(つくる)。閔子騫曰く、旧貫(きゅうかん)に仍らば(よらば)これを如何(いかん)、何ぞ必ずしも改め作らん。子曰く、夫の人は言わず、言えば必ず中たる(あたる)。
[口語訳]魯国の人が長府という倉庫を建設した。閔子騫が言った。『旧来の慣習に従ったらどうだろうか。どうして旧来の慣習を捨てて全ての組織・建物を新しく作る必要があるのだろうか。』。先生がおっしゃった。『あの人は普段はあまり話さないが、話すと必ず的確な発言をする。』。
[解説]伝統文化や旧来の慣例を重視する儒学は、基本的に保守主義のエートス(行動様式)に基づいている。古いものを捨てて安易に新しいものに乗り換えることに危惧を持っていた孔子は、旧来の慣習を重視せよという閔子騫の発言に賛同の意を示したのである。現代的な観点からは、過去の規範やシステムを維持し続けようとする保守主義が必ずしも正しいわけではないが、儒教の基本的な性格である『復古主義』について知ることが出来る章であり、この復古主義は日本の幕末の『王政復古』の理論的根拠ともなったのである。