[書き下し文]季氏、周公より富めり。而うして(しこうして)求(きゅう)はこれが為に聚斂(しゅうれん)して附益(ふえき)す。子曰く、吾が(わが)徒(ともがら)に非ざるなり。小子(しょうし)鼓を鳴らして攻めて可なり。
[口語訳]家臣の季氏一族は主君(魯)の周公よりも裕福であった。そういった状況があるのに、弟子の冉求(ぜんきゅう)が季氏の利益のために徴税の業務を行っている。先生がおっしゃった。『冉求はわれわれの同志ではなくなった。お前たちよ、鼓を鳴らして(批判精神を発揮して)攻撃しても良いのだ。』。
[解説]儒教は、家臣は主君に対する『忠孝の義』を踏み外してはならないという封建主義的な道徳規範の根拠になった教えである。孔子の門弟の冉求が、主君の財産を増やすのではなく家臣の季氏の財産を積極的に増やす徴税行為をしたのを見て、孔子は激しい義憤に駆られた。他の門弟たちに向けて、主君に対する『忠孝の道』を踏み外した冉求を厳しく批判してよいと語り、冉求の不忠な行為を改めさせようとしたのである。