[書き下し文]子曰く、回はそれ庶き(ちかき)か、屡(しばしば)空し。賜(し)は命を受けずして貨殖(かしょく)す。億(おく)すれば則ち屡中たる(あたる)。
[口語訳]先生が言われた。『顔淵の徳性と学問は完全に近いだろう、しかし、彼は常に貧乏であった。子貢は主君の命令を受けずに商売を営んだ。子貢が儲かると推測した時にはいつも的中した。』。
[解説]孔子の門弟の中で最も学問に秀でており、徳性にも優れていたのが顔淵と子貢である。しかし、顔淵のほうはいつも経済的に貧窮しており生活が苦しかったが、子貢のほうは商売の才覚があって、このビジネスをすれば儲けられるという読みが外れたことがなかった。孔子は前途洋洋たるはずの君子たる顔淵が、徳と学問に優れていながら金銭に困り続けている状態を強く憂えたのである。