[書き下し文]仲弓(ちゅうきゅう)、仁を問う。子曰く、門を出でては大賓(だいひん)を見るが如くし、民を使うには大祭に承うるが如くす。己の欲せざるところ人に施す勿れ。邦に在りても怨み無く、家に在りても怨み無し。仲弓曰く、雍(よう)、不敏と雖も、請う、斯の語を事とせん。
[口語訳]仲弓が仁徳について質問をした。先生はお答えになられた。『大門を出て人を迎える時には、いつでも重要な国賓を迎えるようにして、国民を使役する時には、宗廟の大祭を勤めるように厳かに行う。自分がされたくないことを、他人にしてはいけない。そうであれば、国に仕えても人に恨まれることがなく、家庭にいても人から恨まれることはない。』。仲弓は申し上げた。『私は愚鈍な人物ではありますが、先生の言葉を実践させて頂きたいと思っています。』。
[解説]孔子が弟子の仲弓に仁の徳の本質について教諭した章であり、『論語』の道徳規範として有名な『己の欲せざるところ、人に施すことなかれ』が出現する部分でもある。キリスト教の黄金則は『自分がしてもらいたいことを、人にしてあげなさい』であるが、儒教の道徳規範ではお互いに危害を加えるような干渉をやめて『怨み?怒り?復讐の気持ち』を相手に抱かせない配慮に骨子がある。