[書き下し文]子曰く、詩三百を誦(しょう)するも、これに授くるに政を以てして達せず、四方に使いして専り(ひとり)対うる(こたうる)こと能わざれば、多しと雖も亦(また)奚(なに)を以て為さん。
[口語訳]先生が言われた。『詩経三百篇を暗唱していても、政治の任務をうまくこなすことができず、外国に使節として派遣されてもその役目をうまく果たすことが出来なければ、いくら詩を多く暗唱していても何になるのだろうか。』。
[解説]孔子は『詩経』を単純に記憶して理解するだけの能力には意味がないと考えており、春秋時代の貴族階級の基本教養であった『詩経』を実際の政治戦略?外交実務に生かさなければならないと弟子たちに教えていたのである。知識のための知識ではなく、目的遂行のための知識にこだわっているところに孔子の政治的なリアリズムを偲ぶことができる。