[書き下し文]子、衛の公子荊(こうしけい)を謂わく、善く室を居く。始めて有るときは、苟か(いささか)合うと曰い、少しく有るときは、苟か完し(まったし)と曰い、富い(おおい)に有るときは、苟か美し(よし)と曰えり。
[口語訳]先生が、衛国の王族の公子荊のことについて言われた。『家計の切り盛りが上手である。はじめて財産ができたときには、「これでやっと足りる」と言い、少し財産が貯まってきたときには、「これでようやく十分になった」と言った。大きな財産ができたときには、「なんとかこれで良いだろう」と言った。』。
[解説]孔子が家産を蓄積することに巧みだった公子荊について評価した章であり、『浪費を嫌いながら蓄積することの大切さ』を説いた部分である。財産が多少貯まったくらいで『自分はお金持ちである』と慢心せずに、『ようやくこれで十分になった』という気構えを持つことで、公子荊は経済的な余裕を維持できたのであろう。