[書き下し文]子曰く、君子は道を謀りて食を謀らず。耕して餒(う)えその中(うち)に在り。学びて禄(ろく)その中に在り。君子は道を憂えて貧しきを憂えず。
[口語訳]先生が言われた。『君子は道を得ようと考えるが、食を得ようとは考えない。食べるために耕していても飢えることはあるが、道を得るために学んでいれば、俸禄はそこに自然に得られる。君子は道のことを心配するが、貧乏なことは心配しないのである。』
[解説]食事や金銭のことを心配せずに、道(理念・道徳)の実践のことを心配するのが君子としての生き方だと孔子は説く。現代的なリアリズム(現実主義)の視点からすると、明日の食事や給与のことを考えずに生活することは難しいが、孔子の発言は、学問に精通して人格を高めることが『将来の官職(俸禄)』に行き着くという無意識的なリアリズムに根ざしていたのかもしれない。