第一の精霊 お主様に捧げた? おしい事じゃ、ほんにおしい事じゃ、お主の侍るお主――ダイアナ神は御事のために命をすてて御下さらんじゃろがここに居る三人の精霊――世の中にあるだけの精霊は皆お主のためなら命までもと云うておるじゃ。まして私共の様に白髪のない栗色の髪の房々した若い精霊の目が御主に会うた時のあの露のしたたりそうな輝きと会わなんだ時のあの曇り様をお主は知ってじゃろうが……
第二の精霊 そうじゃほんにおしい事じゃ、若々しい美くしいお主は自由な体で気がるに花をつみうたをうたい舞うて居るのが良いのじゃ、「時」は遠慮なく立って幾十年か立つと私共の様な――こんなみにくくはあるまいがとにかく年を取らにゃならぬじゃ、若い中――ほんに短かい若い中を自由に美くしくすごさにゃああまりおしいワ、お主の様にましてうつくしい人ハナ、……
この間精女はうつむいて足の先で小さな花をつっついて居る。
第三の精霊は木のかげに居るまんまで手でかおを押えて居る。
第一の精霊 ソレ、その様に自然に咲きほこって居る花を足の先でじゃらして何も忘れて居るのがお主にはよく美くしさとつりあって居るのじゃナ。今の一日はそうして気ままに歌をうとうて舞をまうて居なされ、声の美くしい駒鳥も姿のよい紅雀もつれて来てお相手さしょう。
第二の精霊 そうして居なされ。お主にそうして居られると私共は涙のこぼれるほど安心なおだやかな心持になれるのじゃ。美くしい花をもつ人はたれかがぬすみに来はせなんだかと思いわずらうと同じに私共はなやむのじゃ。
精女(涙ぐみながらいかにもこまったらしく小さなこえで)お主さまが御まちかねでございます。
第一の精霊 御待ちかね? ダイアナ殿は山羊の乳をまってござるのじゃ、私共はまっとそれより貴いものをダイアナ殿よりまちかねて居るのじゃ。
まちかねて気の狂いそうなものさえある!
第二の精霊 お主の心の花の咲くのをまちかねて居るのじゃ、幼子の様なお主の瞳にかがやきのそわるのをまちかねて居るのじゃ。
第三の精霊はかるくふるえながら木のかげから出て来る。精女、二人の精霊は気がつかずに居るといきなり馳って精女の前にひざまずく。
二人の精霊はあとじさりをし精女はおどろいてとび上る。
精女 アラー? マア――……
第三の精霊 これまでに――お主を……命にかけてとまで思って居るのじゃ。
精女 お立ち下さいませ、泥がつきます。私は貴方さまにそんなにしていただくほど身分の高いものではございませんですから……
第一の精霊 云うでござる、身分の高いものではございませんですから――
良う御ききなされ美くしいシリンクス殿。
年老いた私共は、その若人のするほどにも思われなければ又する勢ももう失せて仕舞うたのじゃ――が年若い血のもえる人達はようする力をもってじゃ。
身分の高い低いを思ってするのではござらぬワ。