五 人民的なオーケストラ
何故こんなにしつこく社会と文化の今日のありようについて、わたしたちは追求せずにいられないのでしょう。わたしたちの心にあるこの抗議と抵抗の動機は、人間らしい、美しい、瑞々しい人生をもちたいという痛切な願いからです。わたしたちみんなの心にこの訴えがあります。わたしたちは、ただ一度しかない人生をいとおしみます。このやわらかい心。やわらかい心が苦しんで訴えるさけび。さけばずにいられない心がむすびあって結集した力。これが現代のわれわれのモラルであり、抵抗です。わたしたちの生きてゆく感覚そのものがより美しいものを求めて社会悪に抵抗する。感情そのもののせつない動きが、いなずまのように社会の価値判断の急所を射つらぬいてゆく。そのような殺しても殺しても生きる命としての抵抗力、強い生活感覚、それこそが、きょうの歴史を生き進んでいるわたしたちの人民的センスであり、抵抗の源泉であると思います。生活と闘いの達人となってゆこうと努力しているわたしたちにとって、理論と行動、思想性と階級性というようなものは、ひっくるめた新しいヒューマニズムとして、すっかり身体の中に入ってしまっていて、それはわたしたちのリズムであり、センスであるところまで行っていいと思います。
正しさは同時に美しさとして感覚されるようにつよくなりたい。部分部分の理解をきりはなして屈服させられるようなことは、あり得ないものになってゆきたいと思います。