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有一天(4)

时间: 2021-07-30    进入日语论坛
核心提示: 然し、彼の妻を呼び一緒にこの晴やかな tete-a-tete の団欒を味おうとした希望は失敗に終った。 今日は殊更しおれて何処か毛
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 然し、彼の妻を呼び一緒にこの晴やかな tete-a-tete の団欒を味おうとした希望は失敗に終った。
 今日は殊更しおれて何処か毛の濡れた仔猫のように見える彼女は、良人かられんに暇をやった一条を聞くと、情けない声で
「困るわ、私」
と云い出した。
「どうして一言相談して下さらなかったの?」
 彼は尤もな攻撃に当惑し、頻りに掌で髪を撫であげた。そして熱心に弁解的説明をした。
「相談しなかったのはあやまるよ。然し、本当に五月蠅い気の揉める(ばば)じゃないか」
 彼は、さっきれんが一年にたった一度のクリスマスと云った口調を、その節まで思い出してむっとした。
「僕やお前が若いと思ってちび扱いにするんだ。代りなんかいくらでもあるよ。――僕だって先刻まで其那気はなかったんだが――」
 彼女は寝台の端に腰をかけ、憤ったような揶揄(からか)うような眼付で、意地わるくじろじろ良人の顔を視た。
「仰云る気がないのに、言葉が勝手にとび出したの?」
「いつもいつも思っていたことが、はずみでつい出て仕舞ったのさ。僕は全く辛棒していたんだよ。ひとの顔さえ見ると何より先にきょとついて、はい、はいとやられると――参るよ」
 さほ子も段々笑い出した。そして、良人の意見に賛成して散々気の毒な老女のぽんち姿を描いて笑い興じた。けれども、笑うだけ笑って仕舞うと、彼女は、足をぶらぶら振るのもやめ困った顔で沈んで仕舞った。
「もうじき大晦日だのにね。――どうするおつもり?」
 彼女は、歎息まじりに訴えた。
「今其那に女中なんかないのよ。貴方男だから好きになすったって如何かなるには違いないけれど。――私困るわ。――返事位少し沢山したってれんを置いて下さればいいのに。……あの人もあの人ね。私に云うと止められるものだから、まるで狡いわ。ただ行って参りますって云うんですもの」
 さほ子の声が次第に怪しく鼻にかかり、口先の慰撫が困難になって来ると、彼は、そろそろ自分の所業を後悔し出した。
「いや全く、いくらはいはい云おうとも、いないには増しに違いなかったろう。葉書で呼びかえすかな。然し、又、あれに攻められるのはやり切れないが」
 彼等は、おそい昼飯を至極技巧的な快活さに於て食べた。――彼は、出来るだけ愉快な心持で善後策を講じる準備に、体は動せない代り、能う限り滑稽な話題で彼女を笑わせようとした。彼女は良人の仕うちが癪にさわり、憤りたいのだけれども、話されることが可笑しいので、笑うまい笑うまいとしてつい失笑するのであった。
 昼餐の時は其でよかった。けれども、もっと皿数の多い、従ってもっと楽しかるべき晩食(ばんめし)になると、彼は殆ど精神的な疲労さえ覚えた、猶悪いことには生憎これが降誕祭の晩ではないか。

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