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犬神家族-第三章 凶報至る(7)

时间: 2022-05-31    进入日语论坛
核心提示:署長と金田一耕助は、また顔を見合わせた。「ああ、なるほど」署長は息苦しそうに、のどにからまる|痰《たん》を切りながら、「
(单词翻译:双击或拖选)
署長と金田一耕助は、また顔を見合わせた。
「ああ、なるほど……」
署長は息苦しそうに、のどにからまる|痰《たん》を切りながら、
「で……? どういう御用件がおありだったんですか。なにか、内密に、話をしたいこと
があったとか、さっきおっしゃったようでしたが……」
「そうなんでございます。だれにも知られずこっそりと、佐武さんのお耳にだけ、入れて
おきたいことがございまして。……」
「その、内密なお話というのは……?」
珠世はそこで湖水のほうから、急に視線を、署長の面にひきもどすと、
「ええ、こうなったら、なにもかも正直に申し上げますわ」
と、ハッキリと心をきめたように、瞳をさだめて妙なことを話しはじめた。
「あたし、お祖父さま……犬神のお祖父さまには、とてもかわいがっていただきました。
子どものころからほんとうの孫のようにかわいがっていただきました。そのことは、あな
たがたもご存じでしょう」
そのことなら、金田一耕助も橘署長も、知っていた。佐兵衛翁の遺言状を見ても、亡く
なった翁が、いかに珠世を愛していたかわかるのである。
珠世はふたりが無言のまま、うなずくのを見ると、また、遠いところを見るような眼つ
きになって、そこはかとなく語りつづけるのである。
「そのお祖父さまに、あたし、時計をいただいたことがございますの。いいえ、ちかごろ
のことではございません。まだお下げにしていた、子どものころでした。タバンの金側で、
両ぶたの懐中時計でございました。いいえ女持ちではございません、女持ちではございま
せんけれど、どういうものか子どものあたしにはひどく気にいりまして、お祖父さまのそ
ばにいると、いつもその時計を出してもらって、いじっていたのでございます。そうする
と、ある日、お祖父さまがお笑いになって、そんなにこの時計が気にいったのなら、おま
えにあげることにしよう。しかし、これは男持ちの時計だから、大きくなったら持つこと
はできないよ。しかし……そうだ、そのときにはおまえのお婿さんになるひとに、贈り物
としてあげればいい。それまで、大事に持っているんだよ。とむろん、それは冗談でした
が、そうおっしゃって、その時計をあたしにくだすったのでした」
署長と金田一耕助は、とまどいしたような顔をして、珠世の横顔を見つめている。昨夜
の話とその時計のあいだに、いったいどのような関係があるというのか。――
しかし、署長も金田一耕助も、話の腰を折るのをおそれて、無言のままひかえている。
それというのが、こういう血なまぐさい場合にもかかわらず、亡くなった佐兵衛翁の話を
するときの珠世の眉に、瞳に、くちびるに、なんともいえぬ、やさしい愛情が、洪水のよ
うにみなぎりわたるのを見たからである。
珠世はあいかわらず、遠いところを見るような眼つきで妙な話をつづけるのである。
「あたし、もううれしくて、うれしくて、その時分、かたときもその時計を、そばからは
なさなかったものでございます。寝るときも、枕元におきまして……チックタック、チッ
クタック……きれいにすんだ響きをきくのが子ども心にもうれしくて……それは、それは、
大事にしていたものでございます。しかし、なにぶんにも子どものことですから、どうか
すると、大事な時計を狂わせることがございました。ネジをまきすぎたり、うっかり、水
をつけたりして……そんなとき、いつも修繕してくださるのが、佐清さんでございました」
佐清――という名が出たので、珠世の遠い、昔の夢物語も、いくらか現実味をおびてく
る。橘署長と金田一耕助はちょっと緊張した顔色になった。
「佐清さんとあたしとは、たった三つしかちがわないのですけれど、あのひとは小さいと
きからとても器用で機械をいじるのが大好きでした。ラジオを組み立てたり、電気機関車
をこさえたり、そういうことが、とてもお上手でした。それですから、あたしの時計の修
繕など、佐清さんにとってはお茶の子の仕事でした。珠世ちゃん、また時計をこわしたの
かい、いけないねえ。……と、そう、たしなめながら、でもあたしの悲しそうな顔を見る
と、ああ、いいよ、直してあげるよ、あしたまで待っててね、今晚じゅうに直しておいて
あげるから、……そして、そのつぎの日になって、ちゃんと直った時計を、あたしの手に
かえしてくださるとき、いつもにこにこ、からかうように笑いながら、珠世ちゃん、この
時計、もっと大事にしなきゃいけないねえ。だって、これきみが大きくなってお嫁にいく
とき、お婿さんにあげる時計だろ、それだったら、もっと大切に、かわいがってやらなき
ゃだめじゃないかと、人差指のさきであたしの|頬《ほ》っぺをつついて……」
こういう話をするとき、珠世の頬にほんのりと赤味がさし、美しい瞳がぬれぬれと、ぬ
れたように輝きをましてくるのである。
金田一耕助は、あの無気味なゴムの仮面をかぶった佐清のことを、ふと、頭のなかにえ
がいてみる。その佐清は、いまはもう見るかげもなく顔がくずれて、気味の悪い仮面をか
ぶっているけれど、かつての佐清の顔をそのままにうつしたといわれるあの仮面はたとえ
ようもなく美しい。
「犬神佐兵衛伝」に出ている写真を見てもかつての佐清がたぐいまれな|美《び》|貌《ぼ
う》の持ち主だったことがわかるのである。おそらくそれは、若かりしころ、珠世の祖父、
野々宮大弐によって、美色を|賞《め》でられたという、佐兵衛翁の血をひくものであっ
たろう。
いま、珠世の話したようなエピソードのあったのは、おそらく珠世がセーラー服の小学
生、佐清が金ボタンの中学生の時分のことであろう。その時分、|雛《ひな》のように美
しい、この|一《いっ》|対《つい》のあいだに、どういう感情が交流していたことだろ
うか。そしてまた、このふたりを見る佐兵衛翁の胸中には、いったいどのような構想がや
どったことか。
金田一耕助はそのとき、卒然として、さっき見た「菊畑」の場面を思い出した。
「菊畑」の鬼一法眼は、下郎に化けて入りこんだ、虎蔵実は牛若丸に兵法の秘書、|六韜
三略虎《りくとうさんりゃくとら》の巻を与えるとともに、娘、皆鶴姫と|女《め》|夫
《おと》にするのである。
ところで、さっき見た菊人形では鬼一は佐兵衛翁の似顔になっており、牛若丸と皆鶴姫
は、それぞれ、佐清と珠世になっていた。してみると、佐兵衛翁はかねてから、佐清と珠
世を夫婦にして、それに虎の巻ならぬ、斧、琴、菊の犬神家の相続権を与えるつもりでは
なかったか。
むろん、菊人形は、猿蔵の作ったものであるから、それがそのまま、佐兵衛翁の遺志を
表現しているとは断言できぬ。しかも、あれを作った猿蔵は知能も人並みでない、|迂
《う》|愚《ぐ》なるものである。しかし、迂愚なるものの直感は、しばしば常人をしの
ぐことがある。猿蔵は猿蔵なりに、佐兵衛翁の気持ちを|忖《そん》|度《たく》してい
たのではあるまいか。あるいは猿蔵の愚直を愛して、佐兵衛翁がひそかに、胸中の計画を
もらしたことがあったのかもしれぬ。そこで猿蔵は、ちかごろのもやもやとした、犬神家
の空気に抗議するために「菊畑」の狂言に仮託して、あのような人形をつくりあげたので
はあるまいか。してみると、これが佐兵衛翁の遺志であったかどうかはしばらく|措《お》
くとしても、少なくとも、猿蔵の眼から見れば、珠世の結婚すべき相手は、佐清をおいて
ほかになく、したがって、虎の巻ならぬ、斧、琴、菊の三種の家宝は、このふたりに与え
られるべきなのだろう。
しかし、その佐清は……
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