魚形潜航艇
潜水夫たちがハヤブサ丸にかえって、怪物のことを報告しますと、船の中は、大さわぎになりました。宮田さんをはじめ、おもだった人たちが、いそいで船長室に集まり、相談をはじめました。
「やっぱり、この船についてきたのですね。むろん金塊をぬすみだすつもりでしょう。なんとかして、それをふせがなければなりません。」
宮田さんが、あおざめた顔で心配そうにいいました。すると、船長もうなずいて、
「こんな怪物は、われわれの手では、どうすることもできません。場合によっては、海上自衛隊の応援をたのまなければなりますまい。海の中へ、大砲でもうちこんで、ころしてしまうほかはありません。いずれにしても、無電で本社へ相談します。そして大阪から、応援隊を送ってもらいます」
すると、そのせきにいたサルベージ会社の技師が、口をひらきました。
「それにしても、時間がかかりますね。怪物はもう金塊のありかを、さがしだしたかもしれませんよ。そして、ぬすみだされてしまったら、もうおしまいです。……船長、あれをつかってみたら、どうでしょう。」
「ダイビング=ベルかね。」
「そうです。あれにぼくがはいって、怪物を見まもっているんです。いくら鉄の人魚でも、あの機械なら、どうすることもできないでしょう。」
「うん、そうでもするほかはないね、じゃあ、きみがはいってくれるか。」
ダイビング=ベルというのは、あつい鉄でできた大きな玉のような潜水機です。その中に人間がはいって、海の底へ沈むのです。
鉄の玉には、あついガラス窓があり、その上にサーチライトのような強い水中電灯がついていて、海の中がよく見えるのです。
また、その鉄の玉には二本の鉄のうでがあって、そのさきは、ものをはさむ大きなツメになっています。鉄のツメです。
サルベージ会社では、潜水夫がもぐれないような深い海底の仕事をするときに、この潜水機をつかうのですが、船長は、まんいちのことをかんがえて、その機械を船につんできたのです。
ハヤブサ丸には、重い潜水機をあつかうための小型のクレーン(起重機)がそなえてありました。数名の船員が、クレーンを動かして、ワイヤーロープで、船倉から潜水機をつりあげ、その中へ、技師がはいりました。それから、機械を密閉すると、クレーンのむきをかえて、海面につき出し、そろそろと、潜水機を海の中へおろすのでした。
潜水機の中は、ちょうど飛行機の操縦室のように腰かけたまま、なんでもできるようになっていました。席の前に、いくつもボタンがついていて、それをおせば、外の鉄のうでや、鉄のツメを自由に動かすことができるのです。
技師は、ガラスののぞき窓から、じっと海の中を見ていました。機械はぐんぐんさがっていきます。窓の上の強い電灯の光で、十メートルさきまでも、はっきり見えます。その光の中を、大小さまざまの魚類が、右に左に泳いでいるさまは、じつに美しいけしきでした。
潜水機は、沈没船のハッチの中へははいりませんから、ハッチの入口のそばまでいって、そこで見はっているつもりなのです。
窓から見ていると、海底の沈没船が、だんだん大きくなってきます。つまり、こちらがその方へ近づいていくのです。