怪獣の秘密
ひろい洞窟の中を八ぴきの鉄の人魚が、オリの中の野獣のようにかたまっていました。
鉄でできた、おそろしい顔に、リンのように青くひかる大きな目、口は耳までさけて、そのくちびるのあいだからニューッと牙がつきだしています。全身に、鉄のウロコがはえ、頭から、背中にかけて、するどい鉄のトサカのようなギザギザがつづいています。胴体としっぽは、ワニとそっくりで、それが、やっぱり鉄でできています。大きさは、人間のおとなよりも大きいのです。
一ぴきでもおそろしいのに、そういう怪物が八ぴきもウジャウジャかたまっているのですから、そのぶきみさは、想像もできないほどです。
ふくめんの首領は、ジャックの持つ懐中電灯の光をたよりに、その怪獣のいわやへ、はいっていきました。そして、鉄の人魚たちにむかって、大きな声で、命令しました。
「おまえたち、よくきけ。陸の入口から、いまに警官がふみこんでくる。おまえたちは、とちゅうまでいって、あいつらを、攻撃するんだ。ひとりのこらず、穴の外へ、おい出してしまえ、そして、穴には中から大石をつめて、二度と、はいってこられないようにするんだ。わかったか。さあ、みんないっしょに、でかけるんだ。」
鉄の怪物どもは、首領の命令を、だまって聞いていました。そして、しばらくのあいだ、シーンと、しずまりかえっていたかとおもうと、やがて、「ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、ジャ。」というたくさんの鉄が、一度にすれちがうような、おそろしい音がおこりました。鉄の人魚どもが、声をそろえて笑っているのです。
「こらっ、おまえたち、どうしたというのだ。おれがわからないのか。なぜ笑うのだ。なぜ、おれの命令にしたがわないのだっ。」
首領が、おそろしい声でどなりました。しかし、鉄のすれあう音は、しずまるどころか、ますます、はげしくなっていきます。怪獣は、首領をばかにして、いつまでも、笑いつづけているのです。
「きさまたち、気がちがったなっ。よし、おもいしらせてやる。」
首領はいきなり、くつばきの足をあげて、すぐそばにいた、一ぴきの人魚の顔をパッとけりました。
すると、にわかに、「ジャ、ジャ、ジャ、ジャ。」という音が、ものすごいちょうしにかわって、八ぴきの鉄の人魚が、四方から、首領をめがけて、おそいかかってきました。
かれらの目のリンのような光は、パッと、もえたつように強くなり、するどい牙を、ガチガチと、かみならし、するどいツメのはえた、両手をひろげて、首領のまわりをとりかこみ、いまにもくいつきそうな、ものすごい形相をしめしました。
さすがの怪物団の首領も、それを見ると、ゾッとしたように立ちすくんでしまいました。どうして、こんなことがおこったのか、さっぱりわけがわかりません。部下の人魚どもが、にわかに首領にそむくとは、いったい、どうしたわけなのでしょう。
すると、そのとき、またしても、ふしぎなことがおこりました。
「ジャ、ジャ、ジャ、ジャ、ジャ……。」と笑っていた怪獣の声が、とつぜん、「ワハハハハ……。」という人間の声にかわったのです。八ぴきの人魚が、人間のように笑いだしたのです。洞窟もゆれるばかりの、おそろしい笑い声でした。
それから、ガチャンガチャンというやかましい音がしたかとおもうと、人魚どもの腹のところが、二つにわれて、その中から、はだかの人間がとび出してきました。
「ワハハハ……、どうだ、おどろいたか。おれたちは、きみの部下じゃないぞ。ハヤブサ丸からやってきた、八人の勇士だ。」