とびちる金塊
そのころは、もう西の空が、夕やけ雲で、まっかにそまっていました。太陽は目に見えて、沈んできます。やがて、東の空がまっ暗になり、それが西の方にひろがっていって、とうとう夜がきました。
しかし、敵に金塊のありかがわかったとすると、夜だからといって、やすんでいるわけにはいきません。明智探偵と、船長と、賢吉少年のおとうさんの宮田さんなどが、ひたいをあつめて相談しました。そして、夜でもかまわないから、大きなしかけで、いっぺんに、金塊を引きあげてしまおうということになりました。
ハヤブサ丸には、太い鉄のくさりでできた大きな網のようなものが、用意してありました。重い荷物をまきあげる道具です。
それにワイヤーロープをくくりつけて、クレーンで海の底におろし、金塊の箱を鉄のくさりの網にいれて、引きあげようというのです。
それがきまると、敵の魚形艇をけいかいしている潜航艇に、無電で、一度浮きあがるように伝えました。そして、じゅうぶん用意をしたうえで、鉄の網といっしょにもう一度沈み、引きあげがおわるまで、けいかいにあたらせるわけです。
鉄の網には、三人の潜水夫がついていくことになりましたが、それだけでは安心ができないので、あの巨大な鉄の玉の潜水機も、いっしょに海底に沈み、大洋丸の甲板のハッチの外で、見はりをすることにしました。
ぜんぶの船員が力をあわせて、それらの用意をしているとき、小林少年が、明智探偵にすがりつくようにして、しきりとなにかをたのんでいました。
「ねえ、先生、ぼくを潜水機にのせてください。潜水夫のまねなんか、ぼくみたいな子どもには、とてもできませんけれど、潜水機ならだいじょうぶでしょう。技師さんの前に乗ればいいんです。そのくらいのすきまはあります。ねえ、先生、たのんでください。」
明智探偵は、小林少年をじぶんの子どものように愛していましたから、そんなにせがまれると、いやとはいえないのです。にが笑いをしながら、技師に相談してみました。すると、技師もにこにこして、
「そんなに乗りたいのなら、いっしょに乗ってもいいですよ。すこしきゅうくつですが、からだの小さい小林君なら、乗れないこともないでしょう。かわいらしい小林君といっしょなら、ぼくもたのしいですよ。」
と、しょうちしてくれました。
「小林さん、潜水機に乗るんだって? ぼくも乗りたいなあ。」
賢吉少年が、うらやましそうにいいました。
「きみは、とてもおとうさんが、ゆるしてくれないよ。ぼくより小さいんだし、冒険になれていないからね。でもさいしょ、ぼくが乗ってみて、だいじょうぶだったら、このつぎに、きみが乗ればいいじゃないか。」
小林君はそういって、賢吉少年をなぐさめるのでした。
三十分ほどで、すべての用意がととのいました。まず潜航艇が沈んで大洋丸のまわりをけいかいし、つぎに潜水機が沈み、さいごに鉄の網と三人の潜水夫が沈んでいきました。
小林君はうれしくてたまりません。技師のひざにだかれるようになって、からだを小さくして、まえのガラス窓をいっしんにのぞいていました。