消える魚形艇
ハヤブサ丸では、やっと、準備がおわって、五人の潜水夫が、ちらばった金塊をあつめるために、海の底へおりていきました。もう夜の八時ごろでした。海はまっくらです。
鉄の網も、ロープをとりかえて、潜水夫といっしょに、しずめました。水中電灯をさげた五人のものは、海底の金塊の箱を見つけだしては、その鉄の網の中へはこぶのです。
一時間もかかって、やっと八つの箱を、鉄の網にいれました。さいしょ、網にいれた箱は、十五でしたが、そのうちの七つは、落ちるときに、こわれてしまって、中の金の棒がバラバラになり、海底の砂の中にうずまってしまったので、きゅうにさがしだすことができません。それで、八つの箱を網にいれると、潜水夫のひとりが、潜水カブトのなかの電話で、ひとまず、それを引きあげてくれるように、ハヤブサ丸につたえました。
ハヤブサ丸の甲板では、その電話をきくと、鉄の網のロープを、機械でぐんぐん引きあげました。こんどは、さっきのような大ガニもあらわれず、八つの箱は、ぶじに甲板についたのです。
海底にのこった五人の潜水夫は、つぎに、バラバラになって、砂にもぐっている金の棒をさがしはじめました。砂ばかりではありません。海底には、コンブのような海草が、たくさんはえていますから、その中へ沈んだ金塊をさがすのは、ひどくほねがおれるのです。
しかし、五人のものは、ひとつでも多くさがしだそうと、むちゅうになって、まっ暗な海底を歩きまわりました。
水中電灯は、いくら明るくても、三―四メートルしか、てらしませんので、まるで、墨汁の中を歩いているようなものです。なかまの潜水夫の姿さえ、少しも見えません。ボーッと光った水中電灯が、あちこちに動いているばかりで、人の形までは見わけられないのです。
ふと気がつくと、むこうの方から、二つのまるい光が、ひじょうなはやさで近づいてきました。水中電灯ではありません。もっと強い光です。それが、またたくまに、すぐ目の前にせまってきました。
「あっ、魚形潜航艇だっ。」
ひとりの潜水夫が、おもわずさけびました。その声が、ハヤブサ丸の甲板の受話器にひびきました。
甲板では、ひとりの技師が受話器を耳にあてていましたが、そのさけび声をきくと、すぐに、船長につたえました。船長は無電技師に、みかたの潜航艇へ、そのことをしらせるように命じました。敵の魚形艇を追っぱらうためです。
海底では、魚形艇は、潜水夫たちの、すぐまえに、近づいていました。ギラギラ光る二つの目玉が、あたりをぽーっとてらしているので、魚形艇の全体の姿が、おぼろげに見わけられるのです。
潜水夫たちは、それを見たとき、あまりのおそろしさに、からだがしびれたようになって、さけぶことも、にげだすことも、できなくなってしまいました。魚形艇の長い背中に、見るもぶきみなばけものが、かさなりあって、とりついていたのです。それは八ぴきの鉄の人魚でした。まったくおなじ形の、あのおそろしい怪物が、ウジャウジャと、かたまっていたのです。