それから、ぼくはジャックに変装し、小林をつれて、陸のほうから洞窟にはいり、賢吉君をたすけ出して船に乗せ、ハヤブサ丸に、おくりとどけた。そしてまた、ここへ帰ってきた。ジャックの姿がしばらく見えなかったのは、そのためだよ。
ハハハヽヽヽ、気のどくだが、鉄の人魚怪物団もこれで全滅だね。」
懐中電灯のまるい光は、さっきから、ずっと、ふくめんの首領をてらしていました。かれは、まるで黒い石にでもなったように、身動きもしないで、だまりこんでいるのです。明智は、なお、ことばをつづけました。
「きみは鉄の人魚を発明して、世間をあっといわせようとした。うすい鉄のよろいのなかに、酸素のボンベをとりつけて、中にはいった人間が、水のそこでも、へいきでいられるようにした。
そういうおそろしいやつが、海の中から、ヌーッとあらわれてきたので、それを見た人は、ほんとうの怪物だとおもった。新聞でも、さわぎたてた。
きみはどうかして、大洋丸の金塊の秘密を、かぎ出して、船長の遺言書を、ぬすもうとしたが、失敗した。そして、賢吉君のおとうさんの宮田さんが、金塊ひきあげをやることになり、ハヤブサ丸が、このおきへ、やってきた。
きみは、それを知ると、この洞窟に、ねじろをかまえて、金塊をよこどりしようとした。そこで、海底のたたかいがはじまったのだ。それから、いろいろ、きみょうなことがおこった。ぼくたちは、この洞窟の秘密を知らなかったので、ひじょうにふしぎな気がした。
だが、とうとう、ぼくがこの洞窟を見つけた。そして、ジャックにばけて、ここへはいって、さぐってみると、きみのたくらみや、鉄の人魚の秘密が、すっかりわかってしまった。
そして、ぼくが勝ったというわけだよ。ところで、いよいよ、きみのそのふくめんを、ぬいでもらおうか。ふくめんの下に、ほんとうのきみの顔が、あるかどうかわからないがね。」
そういったかとおもうと、明智はサッと首領にとびかかって、黒ビロードのふくめんを、引きちぎるように、はぎとってしまいました。
「二十面相だ! やっぱりきみだったねえ。」
懐中電灯の光の中に、あらわれたのは、怪人二十面相、あるいは怪人四十面相の、見おぼえのある顔のひとつでした。それが、ほんとうの顔かどうかは、わかりませんが、まえの事件のとき、一度見たことのある顔でした。
そういわれて、二十面相は、いちじはギョッとしたようですが、すぐ、気をとりなおして、ふてぶてしく笑いました。
「ウフフフ……、明智先生、しばらくだったなあ。で、きみはこれから、どうするつもりだね。」
「きまっているじゃないか。きみを警察にひきわたすのさ。」
「ウフフフ……、いい気なもんだねえ。おれが、おとなしく、きみにつかまるとでも思っているのかい。」
「こうするのさ!」
明智がパッと、二十面相に、くみつこうとすると、あいては、スルリと、その手の下をくぐって、いきなり洞窟のおくの方へ逃げ出しました。