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魔法博士-被分解的孩子

时间: 2021-12-09    进入日语论坛
核心提示:バラバラ少年 それはやっぱり、白い大きなきれでからだをつつんだ、まっ黒な男でした。さっきの老人ではありません。三十ぐらい
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バラバラ少年


 それはやっぱり、白い大きなきれでからだをつつんだ、まっ黒な男でした。さっきの老人ではありません。三十ぐらいの力の強そうな男です。手にはピカピカ光る恐ろしく幅のひろい刀を持っています。
 むかし中国に、青竜刀(せいりゅうとう)という恐ろしい刀がありましたが、あれとそっくりです。刀のことを、ダンビラといいますが、これは牛でも殺すような大ダンビラです。
 その男は、まっ黒な中に、目ばかり白くギョロギョロさせた、恐ろしい顔をしていました。ひとことも、口をききません。三人の少年のほうを、ふりむきもしません。うらみにもえる白い目で、縄を登っていく子どもを、ぐっと、にらみあげているのです。
 男の手が、縄にかかりました。大ダンビラを口にくわえ、両手で縄にすがると、そのまま、子どものあとを追って、登りはじめました。
「キャーッ。」
 上の方から、悲鳴がきこえました。もう五メートルも、縄を登った子どもが、大ダンビラの男を見て、あまりの恐ろしさに、死にものぐるいの声で、叫んだのです。そして、にわかに手足をはやめて、逃げるように、縄を登るのでした。
 しかし縄は、洞窟のてんじょうで、いきどまりになっています。そこへ、追いつめられたら、もう、どうすることもできないではありませんか。
 大ダンビラを口にくわえた男は、子どものあとから、ゆうゆうと登っていきます。いくら逃げたって、だめなことを、ちゃんと知っているのでしょう。
 三少年は、それを見て、胸がドキドキしてきました。あの恐ろしい男は、赤白だんだらの小さい子どもを、殺してしまうのではないかとおもうと、気が気ではありません。井上君などは、とびだしていって、下から男の足をひっぱってやろうかと思いましたが、もう、まにあいません。男も縄のぼりが上手で、たちまち、四―五メートル登ってしまったからです。
 子どものほうは、もう十メートルも、登ったでしょうか。洞窟のてんじょうは暗いので、下からは見えなくなってしまいました。
 手に汗をにぎって、見あげていますと、ダンビラの男も、てんじょうのやみのなかへ、姿が消えていきました。
 ああ、縄の上に追いつめられた子どもは、どうしているのでしょう? いまごろは、男につかまって、恐ろしいめにあっているのではないでしょうか。
「キャーッ!」
 身ぶるいするような悲しい悲鳴が、てんじょうのやみの中から、聞こえてきました。それが、洞窟にこだまして、あちらからも、こちらからも、キャーッ、キャーッという声が、かさなりあって聞こえるのです。五人も六人も子どもがいて、つぎつぎと叫んでいるような気がします。
 そのこだまの声が、だんだん小さくなって、スーッと消えていったころに、ぎょっとするような恐ろしいことが、おこりました。
 サーッと、てんじょうから、なにかほそ長いものが落ちてきたのです。赤白だんだらの棒のようなものでした。それが地上に落ちて、コロコロと、ころがりました。
 なんだか、えたいのしれないものです。びっくりして、息をのんでいますと、……またもや、てんじょうから、同じような赤白だんだらの長いものが、サーッと、落ちてきました。それから、そのあとを追うようにして、こんどは、まえよりはすこし小さい赤白だんだらのものが、つづいて二つ、落ちてきて、床にころがりました。
 よく見ると、あとから落ちた二つには、かわいらしい五本の指が、はえているのです。手です。あの黒人の子どもの黒い手です。
 それでは、さきに落ちた二つは、足かもしれません。ああ、そうです。よく見ると、黒いズックのゴムぐつをはいているではありませんか。おくびょう者のノロちゃんは、それがわかると、いきなり、小林少年のからだに、しがみつきました。そして、ガタガタふるえているのです。
 ああ、あのかわいらしい子どもは、縄の上で、恐ろしい男のダンビラで、バラバラに、きられてしまったのでしょうか。いくら地底の魔法国でも、こんな人ごろしが、ゆるされていいものでしょうか。
 それから、つづいて、二つのものが、てんじょうから落ちてきました。子どもの首と胴です。赤白の運動帽をかぶった、かわいらしい首が、地上に落ちて、コロコロと、ころがりました。
 それを見ると、井上君が、「うーん。」とうなって、小林君の腕をつかみました。
「もうだまっていられないよ。ぼくたちで、あいつを、つかまえよう。そして、警察へつれていくんだ。ね、小林さん、いくら、魔法の国でも、こんなざんこくなことは、ゆるしておけないよ。ぼくらは明智先生の弟子じゃないか。名誉ある少年探偵団じゃないか。ね、あいつをつかまえて、ひどいめにあわせてやろうよ。」
 井上君は、顔をまっかにしておこるのでした。
 しかし、小林君は、なにか、べつの考えがあるらしく、すこしもさわぎません。こわがって、ふるえているノロちゃんと、目をむいて、おこっている井上君を、力づけたり、なだめたりするように、ニコニコ笑っていいました。
「まあ見ていたまえ、いまにわかるよ。あの子どもが、ほんとうに殺されたのかどうか、いまにわかるよ。」
 そのとき、まっすぐに立っている縄を、スーッと、すべりおりてきたものがあります。あの恐ろしい黒人です。かた手で大ダンビラをにぎり、かた手だけで、すべってきたのです。ギラギラ光る大ダンビラには、まっかに血がついています。
「小林さん、あの血をごらん。やっぱり、ほんとうに殺されたんだよ。ね、あいつを、とっつかまえよう!」
 小林君は、かけだしそうにする井上君の手を、ぐっとつかんで、ひきとめました。
「いまにわかるよ。じっとしていたまえ。」
 すると、そのとき、とっぴょうしもない笑い声が、聞こえてきました。
「ワハハハハハ……。」
 地上におりた大ダンビラの男が、三少年のほうを向いて、さもおかしそうに笑っているのです。

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