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目羅博士の不思議な犯罪(7)_目罗博士不可思议的犯罪_江户川乱步_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示: 朝になって、その辺一帯を受持っている、道路掃除の人夫が、遙(はる)か頭の上の、断崖のてっぺんにブランブラン揺れている縊死
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 朝になって、その辺一帯を受持っている、道路掃除の人夫が、(はる)か頭の上の、断崖のてっぺんにブランブラン揺れている縊死者(いししゃ)を発見して、大騒ぎになりました。
 彼が何故(なぜ)自殺をしたのか、結局分らないままに終りました。色々調べて見ても、別段事業が思わしくなかった訳でも、借金に悩まされていた訳でもなく、独身者のこと(ゆえ)、家庭的な煩悶(はんもん)があったというでもなく、そうかといって、痴情の自殺、(たと)えば失恋という様なことでもなかったのです。
『魔がさしたんだ、どうも、最初来た時から、妙に沈み勝ちな、変な男だと思った』
 人々はそんな風にかたづけてしまいました。一度はそれで済んでしまったのです。ところが、間もなく、その同じ部屋に、次の借手がつき、その人は寝泊りしていた訳ではありませんが、ある晩徹夜の調べものをするのだといって、その部屋にとじこもっていたかと思うと、翌朝は、又ブランコ騒ぎです。全く同じ方法で、首を縊って自殺をとげたのです。
 やっぱり、原因は少しも分りませんでした。今度の縊死者は、香料ブローカーと違って、極く快活な人物で、その陰気な部屋を選んだのも、ただ室料が低廉(ていれん)だからという単純な理由からでした。
 恐怖の谷に開いた、呪いの窓。その部屋へ入ると、何の理由もなく、ひとりでに死に()くなって来るのだ。という怪談めいた(うわさ)が、ヒソヒソと(ささや)かれました。
 三度目の犠牲者は、普通の部屋借り人ではありませんでした。そのビルディングの事務員に、一人の豪傑がいて、(おれ)が一つためして見ると云い出したのです。化物屋敷を探険でもする様な、意気込みだったのです」
 青年が、そこまで話し続けた時、私は少々彼の物語に退屈を感じて、口をはさんだ。
「で、その豪傑も同じ様に首を縊ったのですか」
 青年は一寸(ちょっと)驚いた様に、私の顔を見たが、
「そうです」
 と不快らしく答えた。
「一人が首を縊ると、同じ場所で、何人も何人も首を縊る。つまりそれが、模倣の本能の恐ろしさだということになるのですか」
「アア、それで、あなたは退屈なすったのですね。違います。違います。そんなつまらないお話ではないのです」
 青年はホッとした様子で、私の思い違いを訂正した。
「魔の踏切りで、いつも人死(ひとじに)があるという様な、あの種類の、ありふれたお話ではないのです」
「失敬しました。どうか先をお話し下さい」
 私は慇勲(いんぎん)に、私の誤解を()びた。

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