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帕诺拉马岛绮谭(二十)

时间: 2022-03-07    进入日语论坛
核心提示:二十 そこにはどの様な不思議な仕掛けがしてあったのか、それとも又、ただ千代子の幻覚に過ぎなかったのか、一つの景色から、僅
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二十


 そこにはどの様な不思議な仕掛けがしてあったのか、それとも又、ただ千代子の幻覚に過ぎなかったのか、一つの景色から、僅かばかりの暗闇を通って、今一つの景色へと現れるのが、何かこう夢の様で、一つの夢から又別の夢へと移る時の、あの曖昧な、風に乗っている様な、その(あいだ)全く意識を失っている様な、一種異様な心持なのでした。随って、その一つ一つの景色は、全く平面を異にした、例えば三次の世界から四次の世界へと飛躍でもした感じで、ハッと思う間に、今まで見ていた同一地上が、形から色彩から(におい)に至るまで、まるで違ったものに変っているのでした。それは本当に夢の感じか、そうでなければ、活動写真の二重焼付けの感じです。
 そして、今二人の目の前に現れた世界は、廣介はそれを花園と称していたのですけれど、一般に花園という文字から聯想される何物でもなくて、乳色に(よど)んだ空と、その下に不思議な大波の様に起伏する丘陵の肌が、一面に春の百花によって、(ただ)れているに過ぎないのです。併し、それの余りの大規模と、空の色から、丘陵の曲線と百花の乱雑に至るまで、悉く自然を無視した、名状の出来ない人工の為に、その世界に足を踏み入れたものは、暫く茫然(ぼうぜん)として佇む外はないのでした。
 一見単調に見えるこの景色の内には、何かしら、人間界を離れて、例えば悪魔の世界に入った様な、異様な感じを含んでいました。
「お前、どうかしたのか。目まいがするのか」
 廣介は驚いて、倒れかかる千代子の身体を(ささ)えました。
「エエ、何ですか頭が痛くって……」
 むせる様な香気が、例えば汗ばんだ人間の肉体から発散する異臭に似て、併し決して不快ではない所の香気が、先ず彼女の頭の芯をしびれさせたのです。それに、不思議な花の山々の、無数の曲線の交錯が、まるで小舟の上から渦巻き返す荒浪(あらなみ)を見る様に、恐しい(いきおい)で彼女を目がけておし寄せるかと疑われたのです。決して動きはしないのです。でもその動かぬ丘陵の重なりには、考案者の不気味な奸計が隠されていたとしか考えられません。
「私、何だか恐しいのです」
 漸く立直った千代子は、目をふさぐ様にして、僅かに口を利きました。
「何がそんなに恐しいの」
 廣介は脣の隅に、ほのかな笑いを震わせて聞きました。
「何だか分りませんわ。こんなに花に包まれていて、私は無上(むしょう)に淋しい気がいたします。来てはならない所へ来た様な、見てはならないものを見ている様な気持なのですわ」
「それはきっと、この景色が余り美しいからだよ」廣介はさり気なく答えました。「それよりも、御覧。あすこへ、私達の迎いのものがやって来たから」
 とある花の山蔭から、まるで御祭の行列の様に、しずしずと一組の女達が現われました。多分身体全体を化粧しているのでしょう、青味がかった白さに、肉体の凹凸(おうとつ)に応じて、紫色の隈を置いた、それ故に一層陰影の多く見える裸体が、背景の真赤な花の屏風(びょうぶ)の前に、次々と浮出して来るのです。
 彼女等は、テラテラと(あぶら)ぎったたくましい足を、踊る様に動かし、黒髪を肩に波うたせ、真赤な脣を半月形に開いて、二人の前に近寄り、無言のまま、不思議な円陣を作るのでした。
「千代子、これが私達の乗物なのだ」
 廣介は千代子の手を取って、数人の裸女によって作られた蓮台(れんだい)の上におし上げ、自分もそのあとから、千代子と並んで、肉の腰掛に座を占めました。
 人肉の花びらは、開いたまま、その中央に廣介と千代子とを包んで、花の山々を巡り始めるのです。
 千代子は、目の前の世界の不思議さと、裸女達の余りの無感動に幻惑して、いつしかこの世の羞恥(しゅうち)を忘れて了った形でした。彼女は、膝の下に起伏する、()え太った腹部の(やわら)()を、寧ろ快くさえ感じていました。
 丘陵と丘陵との間の、谷間とも見るべき部分に、細い道は幾曲りしながら続きました。その裸女達の素足が踏みしだく所にも、丘と同じ様に百花が乱れ咲いているのです。肉体の柔かなバネ仕掛けの上に、深々としたこの花の絨毯は、彼等の乗物を、一層滑かに心地よくしました。
 併し、この世界の美は、絶えず彼等の鼻をうっている、不思議な(かおり)よりも、乳色に澱んでいる異様な空の色よりも、いつから始まったともなく、春の微風(そよかぜ)の様に、彼等の耳を楽しませている、奇妙な音楽よりも、或は又、千紫万紅(せんしばんこう)、色とりどりの花の壁よりも、その花に包まれた山々の、語り得ぬ不思議な曲線にありました。人はこの世界に於て、始めて、曲線の現し()る美を悟ったでありましょう。自然の山岳と、草木(そうもく)と、平野と、人体の曲線に慣れた人間の目は、ここにそれらとはまるで違った曲線の交錯を見るのです。どの様な美女の腰部(ようぶ)の曲線も、或はどの様な彫刻家の創作も、この世界の曲線美には比べることが出来ません。それは自然を描き出した造物主ではなくて、それを打ち(ほろ)ぼそうと企らむ悪魔だけが描き得る線であったかも知れません。ある人はそれらの曲線の重なりから、異常なる性的圧迫を感ずるでありましょう。併しそれは決して現実的な感情を伴うものではないのです。我々は悪夢の(うち)でのみ、往々にしてこの種の曲線に恋することがあります。廣介は、その夢の世界を、現実の土と花とを以て、描き出そうと試みたものに相違ありません。それは崇高というよりも、寧ろ汚穢(おわい)で、調和的というよりも、寧ろ乱雑で、その一つ一つの曲線と、そこに()(ただ)れた百花の配置は、快感よりは一層限りなき、不快を与えさえします。それでいて、その曲線達に加えられた不可思議なる人工的交錯は、(しゅう)を絶して、不協和音ばかりの、異様に美しい大管絃楽を奏しているのでありました。
 又、この風景作家の異常なる注意は、裸女の蓮台が通り過ぎる所の、谿間(たにま)の花の細道が作る曲線にまでも行届いていたのです。そこには曲線そのものの美ではなくて、曲線に沿って運動するものの感ずる、謂わば肉体的快感が計画されていました。或は(ゆるや)かに、或は急角度に、或は(のぼ)り、或は下り、道は上下左右に様々の美しい曲線を描きました。それは例えば、空中に於て飛行家が味わう様な、又、我々がつづら折の峠道を走る自動車の中で感ずる様な、曲線運動の快感の、もっと緩かに()つ美化されたものと云えばいいでしょうか。
 時々上り坂はありながら、道は少しずつある中心点に向って下って行く様に見えました。そして、異様なる香気と、地の底からの様に響く音楽とは、層一層その度を高め、遂には、彼等の鼻をも耳をも、その美しさに無感覚にして了う程も、絶え間なく続くのでした。
 時とすると、谿間は広々とした花園と開け、その彼方に、空へのかけ橋の様に、花の山がそびえ、その茫漠たる斜面に、吉野山の花の雲を数倍した、幻怪なる光景を展開しました。そして、一層驚くべきは、その斜面と広野との、虹の様な花を分けて、点々と、幾十人の裸体の男女の群が、遠くのものは白豆の様に小さく、嬉々としてアダムとイヴの鬼ごっこをやっていることでした。山を駈け降り、野を横切って、黒髪を風になびかせた一人の女が、彼等から一間ばかりの所へ来て、バッタリ倒れました。すると、彼女を追って来た一人のアダムは、彼女を抱き起して、彼の広い胸の前に、一文字(いちもんじ)に抱えると、(いだ)くものも、抱かれたものも、この世界に充満する音楽に合せて、高らかに歌いながら、しずしずと彼方へ立去るのでした。
 又ある箇所には、細い谷間の道を覆って、アーチの様に、白鯰のユーカリ樹の巨木が腕をのべ、その枝もたわわに裸女の果実が実っていました。彼女等は、太い枝の上に身を(よこた)え、或は両手でぶら下って、風にそよぐ木の葉の様に、首や手足をゆすりながら、やっぱりこの世界の音楽を合唱しているのです。裸女の蓮台は、その果実の下を、凡そ無関心を以て、静に練って行くのです。
 延長にして一里はたっぷりあったと思われる、道々の花の景色、その間に千代子の味った不思議な感情、作者はそれをただ、夢とのみ、或は瑰麗(かいれい)なる悪夢とのみ、形容するの外はありません。
 そして、遂に彼等が運ばれたのは、巨大なる花の擂鉢(すりばち)の底でありました。
 そこの景色の不思議さは、擂鉢の(ふち)に当る、四周の山の頂から、滑かな花の斜面を伝って、雪白(せっぱく)の肉塊が、団子(だんご)の様に珠数継(じゅずつな)ぎにころがり落ちて、その底にたたえられた浴槽の中へしぶきを立てていることでした。そして、彼女等は、擂鉢の底の湯気(ゆげ)の中を、バチャバチャと跳ね廻りながら、あののどかな歌を合唱するのです。
 いつ着物を脱がされたのか、殆ど夢中の間に、千代子()も華やかな浴客達に混って、快い湯の中につかっていました。不自然な衣服を着けていることが、寧ろ恥かしくなるこの世界では、千代子も彼女自身の裸体を殆ど気にしないでいられたのです。そして、彼等を乗せた裸女達は、ここでこそ文字通り蓮台の役目を勤め、長々と寝そべって、首から下を湯につけた二人の主人を、彼女達の肉体によって支えなければなりませんでした。
 それから、名状の出来ぬ一大混乱が始ったのです。肉塊の滝つ瀬は、益々その(すう)を増し、道々の花は踏みにじられ、蹴散(けち)らされて、満目の花吹雪(ふぶき)となり、その花びらと湯気としぶきとの濛々(もうもう)と入乱れた中に、裸女の肉塊は、肉と肉とを()り合せて、(おけ)の中の(いも)の様に混乱して、息も絶え絶えに合唱を続け、人津浪(ひとつなみ)は、或は右へ或は左へと、打寄せ揉み返す、その真只中(まっただなか)に、あらゆる感覚を失った二人の客が、死骸の様に漂っているのでした。

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