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帕诺拉马岛绮谭(六)

时间: 2022-02-27    进入日语论坛
核心提示:六 彼の目的に取って好都合だったことには、十畳敷き程の船尾の二等室には、たった二人の先客があったばかりで、しかもそれが二
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 彼の目的に取って好都合だったことには、十畳敷き程の船尾の二等室には、たった二人の先客があったばかりで、しかもそれが二人共田舎(いなか)者らしく、セルの着物にセルの羽織(はおり)という()でたち、顔も巖乗らしく日に焼けて、その代りには頭の働きは一向鈍感相な中年の男達でありました。
 人見廣介は黙って船室に入ると、先客達からずっと離れた、隅っこの方に席を取って、さて一寐入(ひとねい)りという恰好で、備えつけの毛布の上に(よこた)わるのでした。(しか)し勿論寐て了う訳ではなく、うしろ向きになったまま、じっと二人の男の様子をうかがっていたのです。ゴロゴロゴットン、ゴロゴロゴットンと、神経をうずかせる様な機関の(ひびき)が、全身に伝わって来ます。鉄の格子(こうし)で囲った、鈍い電燈の光が、横になった彼の影を、長々と毛布の上に投げています。うしろでは、男達は知合いと見えて、まだ坐ったまま、ボソボソと話し合っている、その声が機関の音とごっちゃになって、妙に睡気(ねむけ)を誘う様な、けだるいリズムを作るのです。その上、海は(しずか)らしく、波の音も低く、動揺も殆んど感じられぬ程で、そうして、じっと横になっていますと、二三日来の興奮が、徐々に静まって行って、その空虚へ、名状し(がた)い不安の念が、モヤモヤと湧き上って来るのでした。
「今ならまだ遅くない。早く断念するがいい。取り返しがつかなくなる前に、早く断念するがいい。お前は生真面目(きまじめ)に、お前のその気違いめいた妄想を実行しようとしているのか。本当に冗談ではなかったのか。一体それでお前の精神状態は、健康なのか。若しやどこかに故障があるのではないか」
 時間と共に彼の不安は増して行きました。併し、彼はこの大魅力をどうして捨て去ることが出来ましょう。不安がる心に対して、彼のもう一つの心が説服(せっぷく)を始めるのです。どこに不安があるのだ。どこに手抜かりがあるのだ。これまで計画した仕事を、今更ら断念出来るものか。そして、彼の頭の中には、彼の目論見(もくろみ)の一つ一つが、微細な点に(わた)って、次々と現れて来るのです。しかも、そのどの一つにも、少しの手落ちだって、あろう道理はないのでした。
 ふと気がつくと、二人の客の話声(はなしごえ)がいつの間にかやんで、その代りに、調子の違った二通りの(いびき)()が、部屋の向側(むこうかわ)から響いていました。寝返りを打って、細目を開いて見ますと、男達は健康らしく大の字になって、相好(そうごう)くずして、よく寐入っているのです。
 何者か、性急(せっかち)に彼の実行をせき立てるのが感じられました。機会が到来したという考えが、彼の雑念を立所に一掃(いっそう)して了いました。彼は何かに命ぜられる様に少しの躊躇(ちゅうちょ)もなく、枕頭(まくらもと)の行李を開いて、その底から一枚の着物の[#「着物の」は底本では「着物を」]切れはしを取り出しました。それは妙な形に引き裂かれた、五六寸位の古びた木綿絣(もめんがすり)でした。それを掴むと、行李は元の通りに(ふた)をして、かれはソッと甲板(かんぱん)に忍び出るのでした。
 もう十一時を過ぎていました。(よい)の内は時々船室へも顔を見せたボーイや船員達も、それぞれ彼等の寝間(ねま)に退いたのか、その辺には人影もありません。前方の一段高い上甲板には、定めし舵手(だしゅ)徹宵(てっしょう)の見張りを続けているのでしょうが、今人見廣介の立っている所からはそれも見えません。(ふなべり)によれば、しぶきを立てる大波のうねり、船尾に帯をのべる夜光虫の燐光(りんこう)、目を上ぐれば、眉を圧して迫る三浦(みうら)半島の巨大なる黒影、明滅する漁村の燈火、そして、空にはほこりの様な無数の星屑(ほしくず)が、船の進行につれて、鈍い回転を続けています。聞えるものは、鈍重な機関の響と、舷にくだける波の音ばかりです。
 この分なれば、彼の計画は先ず発覚する心配はありません。幸い時は春の終り、海は眠った様に静です。航路の関係上、陸影は徐々に船の方へ近づいて来ます。後はもう、その陸と船とが最も接近する、予定の場所を待つ丈けなのです。(彼は(たびたび)この航路を通ったことがあって、それがどの辺だかをよく心得ていました)そして、たった数町の海上を、人目にかからぬ様に泳ぎ渡りさえすればよいのでした。
 彼は先ず闇の中に、舷を探し廻って、欄干(らんかん)の外部に釘の出ている個所を見つけると、その釘へ、さい(ぜん)の絣の切れを、風で飛ばぬ様にしっかりと引懸(ひきか)けて置いて、それから、帆布(はんぷ)の影に隠れ、素肌にただ一枚着けていた、今の切れと同じ様な柄の古びた(あわせ)を脱ぐと、(たもと)の中の財布と変装用具とを落さぬ様にくるみ、そいつを兵児帯(へこおび)でかたく背中へ結びつけました。
「さあこれでよし。少しの間冷い思いをすればいいのだ」
 彼は帆布の影を這い出して、もう一度その辺を眺め廻し、大丈夫誰も見ていないことが分ると、巨大な守宮(やもり)の恰好で、甲板上を舷へと()って行き、スルスルと欄干を乗り越えました。音を立てない様に何かにすがって飛び込むこと、スクリュウに捲き込まれない用心をすること、この二つの点は、彼がもう何度となく考えて置いたことでした。それには、船が水道を通る時、方向転換の為に速度をゆるめた際が最も好都合なのです。そして、その時が又、陸にも一番近いのです。で、彼は舷の何かの綱にすがって、いつでも飛び込める用意をしながら、その方向転換の好機を、今か今かと待ち構えました。
 不思議なことには、この激情的な場合にも拘らず、彼の心はいとも冷静に静まり返っていました。(もっと)も、進行中の船から海に飛び込んで、対岸に泳ぎつくことは、別段罪悪というではありませんし、それに距離も短く、泳ぎの方の自信もあり、大した危険のないことは分っていたのですけれど、といって、それがやっぱり彼の大陰謀の一つの予備行為であって見れば、彼の気質として不安を感じないでいられよう(はず)がないのでした。それにも拘らず、かくも冷静に、落ちつき払って行動することが出来たのは、何とも不思議と云わねばなりません。彼は(のち)になって、計画に着手して以来、一日毎に大胆にふてぶてしくなって行った、彼自身の心持をふり返り、そのはげしい変化に、非常な驚きを味ったことですが、彼がそうして舷にとりすがった時の心持が、恐らくその手始めであったのかも知れません。
 やがて、船は目的の個所に近づき、ガラガラという、舵器(だき)(くさり)の音がして、方向を換え始め、同時に速度も鈍くなって来ました。
「今だ!」綱を離す時には、それでも、流石に心臓がドキンと躍り上りました。彼は手を離すと同時に、全身の力をこめて舷を蹴り身を(たいら)かにして、なるべく遠い所へ、丁度水に乗った形で、音の立たぬ様にすべり込む方法を()りました。
 ゴボンという水音、ハッと身にしむ冷たさ、上下左右から迫って来る海水の力、もがいても、もがいても水の表面に浮び上らぬもどかしさ、その中で、彼は併し、滅多無上(むしょう)に水を()き、水を蹴り、一(すん)でも一尺でも、スクリュウから遠ざかることを忘れませんでした。

 どうしてあの舷の(うずまき)を泳ぎ切ることが出来たか、それから、仮令穏やかな海であったとは云え、しびれる様な冷水の中を、数町の間も、どうして耐えしのぶことが出来たか、後になって考えて見ても、彼にはその我ながら不思議な力をどうも理解出来ないのでした。
 かくて、幸運にも計画の第一着手を、美事(みごと)にやりおおせた彼は、疲れ切った身体を、どことも知れぬ漁村の暗闇の海辺に投げ出して、そこで夜の明けるのを待ち、まだ乾き切らぬ着物を着、変装を(ほどこ)して、村人達が起き()でぬ内に、横須賀(よこすか)と覚しき方向に向って歩き出すのでした。

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