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新宝岛-山区居民

时间: 2021-10-16    进入日语论坛
核心提示:やまと島(じま)の住民 少年達が一箇月の間になしとげたことは、パンの木の発見や、油しぼり機械の発明だけではありません。まだ
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やまと(じま)の住民


 少年達が一箇月の間になしとげたことは、パンの木の発見や、油しぼり機械の発明だけではありません。まだほかにもいろいろな事があったのです。
 まず第一はその無人島に名をつけたことです。その島はちゃんと地図にのっていて、名のある島かも知れませんけれど、少年達はそれを少しも知りませんので、「仮に僕たちで名をつけておこうじゃないか」ということになり、いろいろ名前を相談したあげく、三少年の通っていた小学校の名をとることにきまりました。それは大和小学校というのですが、その「やまと」をとって、無人島を「やまと島」と名づけました。
「やまと島か、すてきだなあ。僕達はやまと島の国民なんだねえ」
「そして僕たちはこの島の王様だよ」
「ア、そうだ三人も王様がいるなんて、おかしいけれど、この島はマア僕達のものなんだからねえ」
 少年達は口々にそんなことをいって、大はしゃぎをするのでした。
 それから、やまと島の政府の日記をつけなくちゃいけないということになり、日記がかりは文章のうまい哲雄君ときまりました。そこで哲雄君は、沈没船から持って来た、あの大きな航海日誌の帳面に、その日その日の出来事を、くわしくしるして行くことになったのです。
 病気になっては大へんだというので、出来るだけ規則正しい生活をするという取りきめもしました。朝は四時起床、正午から三時まで昼寝、夜は日がくれると洞窟の中に入って、今後の計画について相談したり、学校で習ったことを忘れないために、お互に問を出しあって、学科の復習をしたりして、九時には眠りにつくというわりあてです。もっとも少年達には正確な時間はわかりませんでしたが、沈没船から持って来た置時計を、太陽が頭の真上にのぼった時を正午として、時間を合わせたのです。
 その外まだいろいろの事があったのですが、何もかも書いていては際限がありませんので、こまかいことははぶいて一箇月のうちで一番たのしかった出来事をしるしておきましょう。
 それは三人の少年と一匹の犬だけの淋しいお家に、二人の――ではありません、二匹、の新しい家族がふえたことです。その新家族というのは、一匹の可愛らしい眼鏡猿と、一羽の白い鸚鵡でした。
 眼鏡猿というのは、南洋の諸島にすむ小さな可愛らしい猿で、目のふちだけが白くなっていて、ちょうど眼鏡をかけたように見えるために、眼鏡猿と名づけられたのですが、この小猿はおもに夜森の中で、コソコソと獲物をあさる、ごく臆病(おくびょう)なおとなしいやつです。
 この猿が森の中にたくさんいるのを見つけ出したのは、そういうことにかけては目の早い保君でした。どうかして一匹とらえたいものだと、たびたび森の中を歩きまわって、ひどく苦心をして、やっとのことで生虜(いけどり)にしたのです。猿のように木登のうまい保君は、いわば眼鏡猿なんかの親方みたいなものですから、こんなにうまく行ったのかも知れません。
 鸚鵡の方は一郎君が銃でうちとったのです。うちとったといっても、からだに弾丸(たま)をあてたわけではありません。前にも言った通り、この島の鸚鵡は、高い木の枝にとまったり、その辺を飛びまわったりしているのですが、ある日一郎君は、一つおどかしてやろうと思って、そのたくさんの鸚鵡のむらがっている近くへ、猟銃を一発ぶっぱなしたのです。すると、その弾丸が一羽の、鳥の(はね)にあたって、飛ぶ力を失って地上へ落ちて来ました。それを、犬のポパイといっしょにかけつけて、とりおさえ、生虜(いけどり)にしたというわけでした。
 三人と犬だけの家族で、さびしく思っていたところへ、可愛らしい生きものが二匹も加わったので、少年達はもう大よろこびでした。
「この鸚鵡は僕が教育するんだ。今に日本語がしゃべれるようにして見せるよ」
 一郎君が大はしゃぎでいいますと、保君もまけないでいい返しました。
「僕はこの猿に曲芸を教えるんだ。トンボ返りだとか、綱渡だとか」
 二匹の新しい家族は、それぞれ足を紐でくくって、洞窟の中へつないでおきましたが、日がたつにつれて、少しずつ少年達になれて来ました。二匹が最もおそれていたのは犬のポパイでしたが、ポパイの方では、二匹が自分よりズッと小さい動物なので、取るにたらぬ相手とでも思ったのか、別にいじめるようなことはなく、かえっていたわってやるようなそぶりさえ見せるのでした。
 犬と猿とは仲がわるいといいますけれど、相手がこんな小さな豆猿では、いがみ合うはりあいもなかったのでしょう。
 そんなぐあいで、二匹の新しい家族は、ポパイをも恐れぬようになり、しまいには、三人の少年と三匹の動物とが、仲よく一つのテーブルでごはんをたべるようにさえなりました。
 やまと島の一家族――といっても、それが島の全国民なのですが――その一家族の食事のありさまは実に奇妙な、ほほえましいものでした。
 何かの仕事でいそがしい時には、洞窟の中で手がるに食事をすませてしまいますが、くもった涼しい日などには、洞窟の外にテーブルや椅子を持出して、みんなでたのしい食卓につくのでした。
 そのテーブルや椅子は、その後沈没船から運んで来たものですが、大きなテーブルの上には、白布をかけ、その上に御馳走の入った鍋や、どんぶりや、お茶碗や、コップや、葡萄酒の瓶までならべられ、それをかこんで、三人の少年は椅子につき、ポパイも椅子の上にチョコンとすわって、まるで人間のように、食卓の一員となるのです。
 それから、眼鏡猿と鸚鵡とは、椅子にすわるのには小さすぎますから、テーブルの上にのって、お皿にわけてもらった御馳走をたべるのです。二匹とも逃げ出せないように、足をくくった紐のはしが、テーブルの下にむすびつけてあるわけです。
 そして、三人と三匹とは、パンの木の実や、椰子の実や、鹿の肉や、お魚や、鸚鵡のためには特別に木の実の御馳走などもそろっていて、それをみんながおいしそうにパクつくのです。そういうの時には、少年達は葡萄酒を少しずつ飲むことにしていましたが、三人はその葡萄酒のコップを、たがいにカチカチとうちあわせて、やまと島の国民の健康を祝い、今後のしあわせをいのるのでした。
「僕達はもう、ちっともさびしくないねえ。こんなに大ぜい、なかまが出来たんだもの」
「そうだね。けど、どっかの汽船が、この島のそばを通りかかって、あの日の丸の国旗を見つけて、助けに来てくれれば、なおいいんだがねえ」
「ハハハハハ……、慾ばってらあ。そんなうまいわけには行かないよ。一月の間毎日海を見ているんだけど、船の煙さえ見えないじゃないか。もう船のことなんか、あきらめた方がいいよ。僕達はこんなりっぱな島の持主になったんだもの、ちっとも悲しいことなんかないじゃないか」
「でも、なんだか変だねえ」
「何がさ?」
「あんまり平和すぎると思うんだよ。僕達は少ししあわせすぎやしないだろうか。無人島って、こんな平和なもんだろうか。そのうちに何か恐しいことが起るんじゃないかしら。僕はねえ、あの森の奥がこわいんだよ。あの中に何があるか、僕達にはまだちっともわかっていないんだからねえ」
 少年達はそんなことを語り合いました。何か恐しい事が起るんじゃないかと、心配そうに言ったのは哲雄君でしたが、ほんとうに、考えて見れば、三人は少ししあわせすぎるようです。この一月、いろいろ苦労もしましたけれど、これという恐しい出来事には、一度も出あっていないのです。あまり平和すぎて、気味がわるいほどです。
 間もなく、何かびっくりするような事が起るのではないでしょうか。あの奥底の知れぬ森の中から、えたいの知れぬ悪魔が、じっと三人の方を見守って、時の来るのを待っているのではありますまいか。
 やがて、この哲雄君の心配が、思いもよらぬ形であらわれて来る日が来ました。ほんとうにゾッとするような事が、三人の行手にまちかまえていたのです。
     ×     ×     ×
 ある日のこと、保君は一人で森の中を歩きまわっていました。お猿の(しょう)の保君は、誰よりも森がすきなのです。眼鏡猿やパンの木に味をしめて、また何か見つけたいものだと、道もない森の中を、奥へ奥へと歩いて行きました。
 はじめの内は、気味がわるくて、ほんの森の入口だけしか入らなかったのですが、このごろでは、もうなれてしまって、少年達はかなり奥深いところまで、平気で入りこむようになっていました。
 頭の上には高い木が枝をかわして、日の光もささないくらいですから、森の中は夕ぐれのようにうす暗いのです。足の下には落葉が一面につもって、まるでごみ箱の中でも歩いているような気持です。
 何かめずらしいものを見つけようと、夢中になって歩いているうちに、ふと気がつきますと、いつのまにか、一度も来たことのない森の奥へ入りこんでいました。
 これはいけない。道にふみまよっては大へんだから、早く帰ろうと、海岸と思う方角へ歩きはじめましたが、その時はもうおそかったのです。行けば行くほど森がふかくなって、どうしても見おぼえのある場所へ出られません。保君は深い森の中で、とうとう道に迷ってしまったのです。
 泣き出しそうになりながら、無我夢中で歩いていますと、ふと五六メートルむこうに、何かが動いているのに気づきました。
 ハッとして、思わず立止って、よく見ますと、大きな木に、別の木がからみついて、その木の幹が、風もないのに、静かに動いているではありませんか。
 木の葉や小さい枝が動くのなら、あたりまえですが、太い木の幹が、ユラユラと動くなんて、そんなばかなことがあるものでしょうか。
 なんだかお(ばけ)にでも出くわしたような気がして、保君はゾッとふるえ上ってしまいました。
 見てはいけない。早く逃げなければと、気はあせりながらも、こわいもの見たさで、ついその方へ目がひきつけられて行きます。
 保君はその動く木を、じっと見つめていました。そして、そのものの正体をたしかめたのです。保君の顔がたちまち真青(まっさお)になって、口が大きく開いて、その中から、今にも殺されるような、何ともいえぬ恐しいさけび声がほとばしり出ました。
 その動くものは、木の幹ではなくて、一匹の大蛇だったのです。夢にも見たことのない大きな蛇が、木の幹にからみついて、鎌首をもたげて、(りん)のように光る目で、ジーッとこっちをにらみつけていたのです。

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