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新宝岛-正是凯旋之日

时间: 2021-10-17    进入日语论坛
核心提示:凱旋の日こそ それからの三少年には、ただうれしいこと、たのしい事がつづくばかりでした。少年たちの黄金国での愉快なくらしを
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凱旋の日こそ


 それからの三少年には、ただうれしいこと、たのしい事がつづくばかりでした。少年たちの黄金国での愉快なくらしを、くわしく書けば、それだけでも一冊の本が出来るくらいです。でも、三少年の冐険の物語はここで終ったのですから、それから後の出来事は、ごくかいつまんで記しておくにとどめましょう。
 それが、三人にとってどんなに得意な、楽しい日々(にちにち)であったかは、読者諸君のゆたかな想像力で、十分想像して下さい。みなさんが、どれほどすばらしい想像をめぐらされても、おそらく、すばらしすぎるなんていう事はないだろうと思います。
 少年たちは、その日から三日ばかりの間、黄金国のいろいろなものを見てまわるのに(ついや)しました。例の白髭の老人が、親切な案内者となって、あちらこちらと見せてくれたのです。
 まず第一に、石の宮殿の中を見物しましたが、そのりっぱなことは、これが野蛮人も同様なこの国の土人達の手で出来たのかと疑われるほどで、中にも彫刻のならべてある部屋などは、そのきらびやかなこと、筆にも言葉にもつくせないくらいでした。
 そこには美術展覧会のように、さまざまの形をした人間や動物の像が何百となくならんでいるのですが、それが、石や木の彫刻ではなくて、ことごとく黄金なのです。京都の三十三間堂には、びっくりするほどたくさんの金色の仏像がならんでいますが、ちょうどあんな風なのです。しかもそれが、三十三間堂のとはちがって、中まですっかり本当の黄金で出来ているのです。
 宮殿の中を見てしまいますと、今度は外に出て、岩山の谷間谷間にある、一万人に近いという、この国の人民たちのたくさんの家を見てまわりました。それらの家はみな、白い岩山をくりぬいてつくってあるのです。つまり、この国の人たちは、一人のこらず岩の中に住んでいるといってもいいのです。
 又、ある岩山のうしろには、金を精錬する非常に大じかけな工場のあることもわかりました。この国のまわりの山々から掘り出したおびただしい金の鉱石が、その工場で次々と美しい黄金になって行くのです。
 あの子供を助けた湖水のように広い川は、川下の方で細くなって、それが高い岩山と岩山の間をぬって、はるか山脈のむこうがわへ流れているのですが、その川下のごく近い所に、広い土地があって、そこでたくさんの果物や穀物などがとれることもわかりました。
 あとで聞いたところによりますと、そのはるか川下の、山のむこうには、人食人種の大きな部落があって、その野蛮人が、この国の穀物や黄金をうばい取ろうとして、時々攻めのぼって来るので、それをふせぐために、強い軍隊が必要となり、武術をみがくことが盛んになって、王様をはじめ武士たちが、鎧や兜に身をかためているというわけでした。
 さて、一通り国内の見物がおわりますと、三人は宮殿の中の一室をあてがわれ、いつの間にこしらえたのか、皆と同じような黄金の兜と鎧とサンダルまで、ちゃんと用意してあって、三人はそれを身につけることになりました。そして、れっきとした黄金国の一員となったわけです。
 それから、この国の言葉の勉強がはじまりました。黄金国の大臣というような、位の高い人のお嬢さんが、毎日三人の部屋に来て、言葉を教えてくれるのです。身分が高いだけあって、これが土人の娘かと疑われるほど、美しい可愛らしいお嬢さんで、教え方もなかなか上手だったものですから、三月もすると、大体この国の言葉が話せるほどに進歩しました。
 さて、言葉が通じるようになるのをまって、いよいよ三人に重い役目がさずけられることになったのです。
 まず三人の内で一番力も強く勇気もある一郎君は、この国の軍隊の長官を命じられました。まだ子供のくせに、一とびに一国の司令官と同様の役目についたのです。少年の将軍です。
 一郎君はよろこんでその役目をひきうけ、大人の武士たちに、学校で習った、日本式の軍事教練を、知っているかぎり教えてみました。そのおかげで、もとより強い黄金国の軍隊が、ますます強くなったことは申すまでもありません。もう人食人種なんか、少しもこわくはないのです。
 哲雄君は智恵がすぐれているのを見こまれて、武士やその外の人民を教育することを命じられました。これも一とびに一国の大学総長となったわけです。
 宮殿の中の一室を教室にあてて、小さな先生が大いばりで、大人たちを教えるのです。先ず何より無智な土人たちに、世界の地理を知らせなければならぬというので、哲雄君は自分で大きな地球儀をつくり、それを教室の石の机の上において、日本をはじめとして、世界各国のありさまを、知っているだけ教えて聞かせました。それを聞いた、土人たちの驚きがどんなであったかは、みなさんのご想像におまかせしましょう。
 チャメの保君は、その快活な話上手が、たいへん王様の気に入って、いつも王様のそばにいて、話相手になったり、相談役になったりする重い役目を仰せつかりました。いわば少年侍従長です。でも、保君は得意のチャメで、王様を笑わせることは上手でしたが、むつかしい政治上の相談などは苦手だものですから、そういう時には、いつも、大学総長の哲雄君の所へ飛んで行って、智恵を借りるのでした。
 アア、黄金の国の将軍! 大学総長! 侍従長! まだ小学生の身で、こんなすばらしい出世がまたとあるでしょうか。浦島太郎が竜宮へ行った時でも、これほど楽しくはなかったかも知れません。
 しかし、そのうれしく楽しい中で、たった一つ悲しいことがありました。それは、日本のお父さまお母さまに、もう一生あえないかも知れぬということです。せっかくの幸運を、お知らせするすべさえないことです。
 では、三少年は、長い長い生涯を、この南洋のはての、誰にも知られないふしぎな国で終る運命なのでしょうか。イヤイヤ、そんなことはありますまい。南洋の島々は、今世界注視の的です。それらの島々へ通う船はますます多くなり、まだ知られていない野蛮地方の探検は、日一日と盛んになって行くことでしょう。
 三少年のいる島へも、どこかの国の探検隊が出向かないとは限りません。たとえ、少年たちと同じ道を通って、黄金国に達することはむつかしいとしても、まだもう一つの道が残っています。人食人種の部落を征服して、あの川をさかのぼって来る道です。
 三年先か、五年先か、それはわかりませんが、おそらく十年とはたたない内に、きっとそういう探検隊が黄金国を発見するにちがいありません。そして、その探検隊から、黄金国のふしぎな住民と、その国の顧問(こもん)として、土人たちをみちびいている感心な三人の日本少年のことが、世界中の新聞社に伝えられた時、その記事を読む世界各国の人々の驚きは、まあ一体どれほどでしょうか。アア、そのすばらしい日が、一日も早く来ますように!
 もしそうなったならば、黄金国の王様は、きっと三少年の国、日本を訪問したいとおっしゃるにはちがいありません。そして、黄金国は日本の保護を受け、日本の弟分になりたいと望まれるにきまっています。
 ああ、その日はいつ来るのでしょうか。
 みなさん、想像してごらんなさい。故郷に錦をかざるどころか、故郷に黄金をかざる三人の日本少年。黄金の衣裳をつけた王様のお供をして、自分たちもあのキラキラ光る鎧と兜を身につけて、横浜の桟橋に上陸する時の、また東京駅についた時の、そのさわぎを想像してごらんなさい。ほんとうに日本中がわきかえることでしょう。アア、何というすばらしい光景。それを考えただけでも、うれしさに、もう胸がドキドキして来るではありませんか。

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