日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 松本清张 » 正文

点と線(一)目撃者01

时间: 2018-01-12    进入日语论坛
核心提示:1 安田辰郎(やすだたつお)は、一月十三日の夜、赤坂の割烹(かつぽう)料亭「小雪」に一人の客を招待した。客の正体は、某省
(单词翻译:双击或拖选)
 
 安田辰郎(やすだたつお)は、一月十三日の夜、赤坂の割烹(かつぽう)料亭「小雪」に一人の客を招待した。客の正体は、某省のある部長である。
 安田辰郎は、機械工具商安田商会を経営している。この会社はここ数年に伸びてきた。官庁方面の納入が多く、それで伸びてきたといわれている。だから、こういう身分の客を、たびたび「小雪」に招待した。
 安田は、よくこの店を使う。この界隈(かいわい)では一流とはいえないが、それだけ肩が張らなくて落ちつくという。しかし座敷に出る女中は、さすがに粒が揃っていた。
 安田はここではいい客で通っていた。むろん、金の使い方はあらい。それは彼の「資本」であると自分でも言っていた。客はそういう計算に載(の)る人びとばかりであった。もっとも、彼はどんなに女中たちと親しくなっても、あまり自分の招待した客の身分をもらしたことはなかった。
 現に、去年の秋から某省を中心として不正事件が進行していた。それには多数の出入り商人がからんでいるといわれている。現在は省内の下部の方だが、春になればもっと上層へ波及するだろうと新聞は観測していた。
 そういう際でもあった。安田はさらに客について用心深くなった。客によっては、七度も八度も同じ顔があった。女中たちはコーさんとか、ウーさんとか言っているが、素性(すじよう)は全然知らされなかった。が、安田の連れてくる客のほとんどが、役人であるらしいことは、女中たちは知っていた。
 しかし、招待客はどうでもよい。金を使うのは安田であった。「小雪」は、彼を大事にしておけばよかった。
 安田辰郎は、四十ぐらいで、広い額と通った鼻筋をもっていた。色は少し黒いが、やさしい目と、描いたような濃い眉毛があった。人がらも商人らしく練れて、あっさりしている。女中たちには人気があった。しかし安田はそれに乗って、誰に野心があるというでもなさそうだった。彼は誰にたいしても、同じように愛想(あいそ)がよかった。
 係の女中は、はじめ当番をもった因縁(いんねん)で、お時(とき)さんがなっていたが、座敷だけの気やすさで、それ以上に出る模様もなさそうだった。
 お時さんは、二十六だが、年齢(とし)を四つぐらい若く言ってもいいくらいに、色が白くてきれいである。黒瞳(くろめ)の勝った大きい目が客に印象を与えた。客に何か言われて、微笑(ほほえみ)を含んだ上目使いで睨む表情が相手をよろこばした。当人はそれを心得てする仕ぐさであろう。瓜実顔(うりざねがお)で、唇とあごの間がせまく、横顔がきれいだった。
 それくらいだから、客の中には誘惑する者もあったらしい。ここの女中はみんな通(かよ)いである。午後四時ごろに出てきて十一時すぎには帰る。その帰りを待って、新橋駅のガード下あたりに来てくれと誘う者がある。客の言うことだからすげなくは断われない。ええ、いいわと返事して、三回も四回もすっぽかしてしまう。彼女に言わせると、それでたいてい察しをつけてほしい、のだそうである。
「血のめぐりの悪いくせに怒ってんのよ。このあいだお座敷に来て、いやと言うほどつねるのよ」
 お時さんは、すわったまま、着物をめくってちらりと膝を朋輩に見せた。白い皮膚の上に、うす青い痣(あざ)のようなものが一点に鬱血(うつけつ)していた。
「ばかだな。君があんまり気を持たせるからさ」
 と安田辰郎は、その場で杯を含みながら笑って言った。つまり安田は、それだけ気のおけない客になっていた。
「そういえば、ヤーさん、ちっともあたしたちをくどかないわね」
 と、女中の八重(やえ)子(こ)が言った。
「くどいてもはじまらんよ。どうせ肩すかしをくう組だからな」
「やあい、あんなことを言ってる。あたし、ちゃあんと知ってるわ」
 と、かね子がはやした。
「おいおい、変なことを言うなよ」
「だめよ、かねちゃん」
 と、お時さんが言った。
「ここの女中は、みんなヤーさんに惚(ほ)れてるんだけど、ちっとも振りむいてもらえないのよ。かねちゃん、早いとこあきらめなさいな」
「へーんだ」かね子は、歯を出して笑った。
 じっさい、お時さんの言うとおり、「小雪」にいる女中は、多少とも安田に興味を抱いていた。くどかれたら、考えてみる気になるかもしれない。それだけの女好きのする魅力を、安田の顔と人がらは持っていた。
 だから、その晩、某省の役人の客を先に玄関に見送って座敷に帰った安田が、もう一度くつろいで飲みなおして、ふと、
「どうだい、君たち、明日、飯(めし)をご馳走(ちそう)してやろうか?」
 と言ったとき、そこにいた、八重子ととみ子が、一も二もなくよろこんで承知した。
「あら、お時さんがいないわ。お時さんも連れて行ってあげてよ」
 とみ子が座敷を見まわして言った。お時さんは、何かの用事で出て行っていた。
「いいよ。君たち二人でいいよ。お時さんはこの次にしよう。あまり大勢で空(あ)けたら悪いよ」
 それはそのとおりだった。女中たちは四時には店にはいらねばならない。夕飯をおごってもらえば遅くなる。三人も遅れたのではまずいにきまっていた。
「じゃ、明日、三時半に、有楽町のレバンテにこいよ」
 安田は、目もとを笑わせながら言った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%