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点と線(十二)鳥飼重太郎の手紙03

时间: 2018-01-12    点击:313进入日语论坛
核心提示:3 三原は疲労していた。囲まれた壁の中に彼はいた。どの壁面も打ち破ることができない。 鳥飼重太郎の長い手紙をポケットに入
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 三原は疲労していた。囲まれた壁の中に彼はいた。どの壁面も打ち破ることができない。
 鳥飼重太郎の長い手紙をポケットに入れたまま、彼は警視庁を出ると、いつもの店にコーヒーを飲みに行った。
 昼すぎで、店の中は客で一ぱいだった。席を探していると、女の子が、
「こちらへどうぞ」
 と誘った。若い女が、ぽつんと一人ですわって紅茶を飲んでいた。そのテーブルの前だけが空(あ)いていた。知らない女客の前に相客となるのは、なんとなく具合が悪い。三原は椅子に半分尻をすえたまま、落ちつかない気持でコーヒーを飲んでいた。自分ながら浮かない顔を意識した。
 鳥飼重太郎の手紙は、憂鬱な彼の心に一つの弾(はず)みをつけたことは確かである。しかし、それがまだ勇気とまでは行かない。示唆はあったが、抽象的に過ぎた。
 なるほど、二十日の夜、二つの香椎駅で降りた二組の男女から帰納して、新しく謎の女を出した着想はおもしろい。しかし、それには鳥飼自身のいうように、なんの実証もないのだ。この二組の男女は、偶然に同じ時間に違った駅で降りたというだけで、まったく関係がないかもしれないのだ。あるいは国鉄香椎駅で降りた佐山とお時とが、西鉄香椎駅を歩いてすぎたころ、べつべつの人間によって目撃されたかもしれないのである。二つの駅の距離は鳥飼自身が足ではかったことであり、その可能性は十分にあった。
 安田が情死の現場にいあわせて、なんらかの役割を演じたことは、もう間違いないと思えるが、そこに新しく一人の女を付加することは、少しとっぴすぎるように思える。安田の役は複数では困難のような気がする。それが何か(ヽヽ)はっきりは知れない。が、ぼんやりとわかるような予想はあった。
 だから、佐山の宿に電話をかけた女の声がお時でないという鳥飼説も、二つの香椎駅の四人の男女を、佐山とお時、安田とXの女と想定したあやふやな仮説の上に立つのだ。
 それよりも、三原は、安田が東京駅で佐山とお時とを第三者に目撃させたのは、両人の恋愛関係を他人に確認させる目的だったという文句の方に興味があった。なんのために確認させる必要があったか。──つまり、それは、佐山とお時との間は、じっさいは恋愛関係がなかったという意味である。ないからこそ、第三者にその関係を印象づけるよう、両人が仲よく同じ汽車に乗りこむところを目撃させたのだ。だが、その《あさかぜ》号列車の終着駅博多の近郊で両人は情死した。どのような点からみても、それが情死であることに疑問はない。ここに矛盾があった。恋愛関係のない者がどうして情死するか。この矛盾の中に安田辰郎の影がちらちらと動くのである。
 疑問は、お時がどういう理由で、熱海か静岡かで途中下車したか、ということも一つあるが、これとても決定的ではなかった。要するに鳥飼老刑事が、列車食堂の「御一人様」の伝票から割り出したことなのだ。鳥飼のは、男女の心理の機微(きび)から出発したおもしろい説なのだが、これも裏づけがあるわけではなかった。あくまでも憶測の域の中にあった。老刑事のカンは鋭いが、同時に弱点がここにあった。熱海か静岡で降りたお時の行動を調べよというが、今になってその捜査は困難だし、調べること自体が無意味かもわからないのだ。──
 三原が渋い顔をしてコーヒーを飲みながら、ここまで考えたとき、急に傍に人影がさしたかと思うと、前の席の若い女の横に青年がならんですわった。
「やあ、遅くなりました」
 と青年は女に言った。今までしおれていた若い女は、にわかに生き返ったように顔を輝かした。
「何を召しあがる?」
 女はいきいきと青年の横顔をのぞいた。
「コーヒー」
 と、これは給仕に注文しておいて、青年は女に微笑しながらきいた。
「ずいぶん、待った?」
「そう、四十分ぐらい。コーヒーだけでは間がもてなくて、紅茶をいただいたわ」
「すみませんでした」
 と、青年はわびた。
「バスがなかなか来なくてね。あの路線のバスは時間が正確でないから困るんです。二十分ぐらいは平気で遅れるんですからね」
「バスのせいになさるんでしたら仕方がありませんわ」
 若い女は、それでも、うれしそうに言ってしなやかな腕をあげて時計を見た。
「もうはじまっていますわよ。さあ、大急ぎでコーヒーを召しあがれ」
 三原はこの会話をぼんやりと聞いた。ありふれた若い男女のやりとりである。三原が煙草に火をつけている間に、青年はせっかく運ばれてきたコーヒーを一口すすっただけで、女友だちをうながして席を立った。
 三原はすわりなおして、腰を落ちつけた。前の客がのこした茶碗は片づけずに置いたままである。一つの茶碗には黒い液体がいっぱいに残っている。
(定期のバスが時間どおりに来ないとは、よっぽど不便な郊外にいる男らしい)
 今の思考には関係のない、そんなことをむだに考えた。
 しかし、むだではなかった。三原は、はっとした。突然に、ある考えが閃(ひらめ)いたのだ。
(安田が札幌の河西を駅のホームに迎えに来させずに、とくに待合室を電報で指定したのは、万一、飛行機が天候の加減で延着する場合を考慮したからだ!)
 三原は壁の油絵に目をすえたまま、すくんだようにしばらくじっとしていた。
 ──安田としては、じっさい、《まりも》で到着するのだから、河西をホームに来させるのが効果的である。それをさせなかったのは、飛行機には、天候や機材の関係で二時間も三時間も遅れることがあるからだ。それだけ遅れたら、彼は札幌駅から小樽に逆行し、そこで《まりも》をキャッチするというような芸当は不可能になる。《まりも》に乗れなかったらホームに迎えに出た河西にわざわざその汽車で来なかったことを証明するようなものだ。
 思慮深い安田は、その辺まで計算に入れて「待合室で待て」という電報を打ったに違いない。
 三原の目は喜びに燃えた。
(やった!)
 と思った。安田の小細工(こざいく)が、かえって、彼自身が飛行機を利用したことを証明したようなものではないか!
 三原は興奮して外に出た。外の陽が強烈に明かるい。
待てよ、と三原は思った。安田はその電報をどこから打ったのであろう? 
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