日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 松本清张 » 正文

点と線(二)情死体01

时间: 2018-01-12    进入日语论坛
核心提示:1 鹿児島本線で門司(もじ)方面から行くと、博多につく三つ手前に香椎(かしい)という小さな駅がある。この駅をおりて山の方
(单词翻译:双击或拖选)
 
 鹿児島本線で門司(もじ)方面から行くと、博多につく三つ手前に香椎(かしい)という小さな駅がある。この駅をおりて山の方に行くと、もとの官幣大社香椎宮、海の方に行くと博多湾を見わたす海岸に出る。
 前面には「海の中道」が帯のように伸びて、その端に志賀島(しかのしま)の山が海に浮かび、その左の方には残島(のこのしま)がかすむ眺望のきれいなところである。
 この海岸を香椎潟(かしいがた)といった。昔の「橿日(かしい)の浦(うら)」である。太宰師(だざいのそち)であった大伴旅人(おおとものたびと)はここに遊んで、
「いざ子ども香椎の潟に白妙の袖さえぬれて朝菜摘みてむ」(万葉集巻六)と詠(よ)んだ。
 しかし、現代の乾いた現実は、この王朝の抒情趣味を解さなかった。寒い一月二十一日の朝六時半ごろ、一人の労働者がこの海辺を通りかかった。彼は、「朝菜を摘む」かわりに、家から名島(なじま)にある工場に出勤する途中であった。
 朝は明けたばかりであった。沖には乳色の靄(もや)が立っていた。志賀島も海の中道も、その中に薄い。潮の匂いを含んだ風は冷たかった。労働者は外套の襟を立て、うつ向きかげんに、足早に歩いていた。この岩の多い海岸を通ることが、彼の職場への近道であり、毎日の習慣であった。
 が、習慣にないことが、そこに起こった。彼のうつ向いた目が、それをとらえた。黒い岩肌の地面の上に、二つの物体が置かれていた。いつもの見なれた景色の中に、それは、よけいな邪魔物であった。
 まだ陽の射さない、青白く沈んだ早朝の光線の中に、物体は寒々と横たわっていた。じっさい、衣類の端は寒そうに動いていた。が、動いているのはそれと、髪の毛ぐらいなものであった。黒い靴も、白い足袋も固定したままであった。
 労働者の平静が破られて、いつもの習性とは異なった方向へ、彼の足を走らせた。彼は町の方へ駆けて行き、駐在所のガラス戸を叩いた。
「海岸に死人がありますばい」
「死人が」
 と、起きてきた老巡査は、冷たそうに上着の釦(ボタン)をかけながら、通告人の興奮した声を聞いた。
「はあ。二人ですたい。男と女のごつありましたやな」
「どけえあったな?」
 巡査は起きぬけの事件に、びっくりしたように目をむいた。
「すぐ、そこの海ばたですたい。あたしが案内ばしまっしょ」
「そうな。じゃ、ちょっと待ちんしゃい」
 巡査は少しあわてていたが、それでも届出人の住所氏名を書き取り、香椎の本署に電話で連絡をとった。それから二人で交番を急いで出た。二人とも、白い息を凍(こお)った空気の中に吐いていた。
 もとの海岸の場所に引きかえすと、二つの死体はやはり汐風にさらされて横たわっていた。労働者は、こんどは巡査がついてきたので、少し落ちついて、その物体を眺めることができた。
 男よりも、女の方が先に目についた。女は仰向(あおむ)けに顔を見せていた。目は閉じていたが、口は開いて白い歯が出ている。顔はバラ色をしている。鼠色の防寒コートの下には、海老茶色のお召の着物があり、白い衿が、ややはだけていた。着衣は少しも乱れていない。行儀よく寝ていた。ただ裾前が、風に動いて、黄色な裏地を見せていた。きちんと揃えた脚には、清潔な足袋があった。土には汚れていない。すぐ横に、これもていねいに揃えたビニールの草履があった。
 労働者は、つぎに男に目をやった。男の顔は横を向いていた。これも頬は、生きている人のように血色よく見えた。まるで酔って眠っているようである。濃紺のオーバーの端から茶色のズボンがのびて、黒い靴をはいた足をむぞうさに投げ出していた。靴は手入れがとどいていて、なめらかに光っていた。紺に赤い縞(しま)のある靴下がのぞいていた。
 この男女の二つの死体の間は、ほとんど隙間がなかった。岩の皺(しわ)の間を、小さな蟹(かに)がはっていた。蟹は男の傍にころがったオレンジ・ジュースの瓶にはいあがろうとしていた。
「心中したばいな」
 と、老巡査は立って見おろしながら言った。
「かわいそうに。年齢(とし)もまだ若いごつあるやな」
 あたりが、だんだん昼の色に近づいてきた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%