じじがゆとは、私の祖父が作ってくれるおかゆの事です。じじは何でも料理が上手いのですが、母が仕事で外出中の楽しみは『じじがゆ』でした。じじがゆには何種類かあるのですが、一番はイモがゆです。ゴロッとしたさつまいもを口いっぱいにほおばると甘みがじんわりしみて幸せな気分になります。じじはよく戦後の食べる物がない時の日本の話や戦争に巻きこまれて貧しい生活を強いられている人々の話をしながら今の日本はぜいたくすぎてどこかおかしくなっていると言っていました。私はじじの話を聞きながら、お腹いっぱい食べられるのは幸せだなと思いました。
さて、私とじじは仲良く見えますが実は毎日けんかをしていました。じじはマナーにうるさくて、ダラダラしていると猛烈に怒るのです。私もついカッとなって言い返して大げんかになります。そんな時でも私がしょげていると、じじがゆが、だまって出て来ます。泣きながら食べたじじがゆは少ししょっぱかったです。
でももうおいしいじじがゆは食べられません。私が四年生の時にじじが亡くなったのです。けんかをする度に「二度と作らん」と言いつつもいそいそと台所に立ってくれるじじの背中を忘れる事はないでしょう。今でも私の心の中ではじじがゆが湯気を立てています。私が一人ぼっちでさみしい思いをしている時、学校で失敗した時、「ばか者!負けるな!」と心の中のじじがゆがちからをあたえてくれるのです。