私は、小学校四年生の頃から中学三年生まで、長いいじめに遭っていた。陰口に始まり、仲間はずれにされたり、靴を隠されたり、座布団を放り投げられたりと、一つ一つの行為は小さいものであったかもしれないが、私にはそれらの行為と行為との間に、常に心の傷が続いていた。それでも私は学校を休まなかった。なぜなら、私には家族の支えがあったからだ。家族は、いつでもどんな時でも、私を励まし続けた。祖父は私に物事の考え方を教えてくれた。祖母は私を温かい笑顔で包んでくれた。母は時に、私の盾となって守ってくれた。愛犬は私の話相手をしてくれた。このような家族のおかげで、私はどんないじめに遭おうとも、学校を休むという選択はしなかった。しかしそんな私も、いつも心丈夫とはいかなかった。中学に入学した時のことである。中学生になった私は、中学生という自覚から、もう家族に心配をかけてはならないと思い始めた。しかし学校では、いじめが続いていた。
「ばい菌、触らんといて」。
クラスメイトが私に暴言をたたきつける。それまでの私は、言われた行為自体がただただ悲しくて泣いていた。しかし中学生になった私には、違う感情が芽生えていた。
(何で私だけが言われるんやろう。私ってばい菌なんや。私って皆から嫌われ、この世の中で邪魔者なんかもしれん)。
私は、自分自身を責めるようになっていた。朝寝坊の自分、走りが遅い自分、片付けが下手な自分、好き嫌いが多い自分???。自分の欠点ばかりを数え、自分という存在が疎ましく思えるほど落ち込んでいった。
(私なんて、生きていてもしょうがない。何も意味ないやん)。
私は、見るもの聞くもの全てが、つまらないものに感じ、苛立っていた。
そんなある日、学校から家に帰ると、机に一冊の本が置いてあった。本の隅には、「ママの大好きな本です」と書かれた付箋が貼ってあった。桃色の背景に、空飛ぶカエルが描かれた表紙。これが、『自分らしく生きる―your life your own way―』である。私は吸い込まれるように、一気にこの本の世界に入っていった。一頁、一頁と読み進めるうち、この本は私を勇気づけ、励ましていった。なぜなら、私が私であることに気づかせてくれる本だったからだ。この本の一節にはこうある。
「君たちは、すでに知っている。どんな道具よりも、君自身という財産を持っているということを。君たちは、すでに感じとっているだろう。『愛』という生命の息吹を、からだじゅうに。??君たちは君たちらしく、自然のままで、ありのままに生きていけばいい。私は知っている。君たちが、この世界に選ばれて存在していることを。君たちのはるかな未来は、今の君を見ているだろう。さあ、大きく飛んでみなさい。この世界をもっと自由に。」
この一節を読んだ時、これまでの私は、私自身を見失っていたのだと思った。私が私を好きでなければ、他人から愛されていることに気づけないことを知った。そして、私には大きな未来があると感じた時、胸の奥の方が熱くなった。私は、私を愛し育んでくれた家族に、改めて感謝した。そして、私の周りで起こっている出来事を、できる限り受け入れてみよう、自分なりの生き方を恐れず、自分らしく生きてみようと思った。
私は今春、高校へ進学した。真新しい制服を着た私が、鏡に映っていた。その後ろには、家族が笑顔で、鏡の中の私を見つめていた。私は、晴れやかに胸を張って、新たな一歩を踏み出した。
一冊の本との出会いが私を変えた。これから歩む人生の中で、いつか大きな壁にぶち当たるかもしれない。その度に、私はこの本『自分らしく生きる―your life your own way―』を開くだろう。そして、忘れかけていた私自身に向き合い、私の存在を肯定し、私の周りの森羅万象に感謝し、また新たな一歩を踏み出すに違いない。