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言葉をください60

时间: 2020-05-15    进入日语论坛
核心提示:花まちがい神戸へ来て一年経った。北窓の木蓮(よそさまの庭だけれど)は約束どおりに三月十五日に白いつぼみを見せ、あれよあれ
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花まちがい

神戸へ来て一年経った。
北窓の木蓮(よそさまの庭だけれど)は約束どおりに三月十五日に白いつぼみを見せ、あれよあれよと大きくなって、やがてその恥に耐えきれないようにぽかっと開いたのが三月の二十日だった。それから彼岸の雨が降りつづいて、私の目の前で風に死んでいったのが三月の二十七日。
それからのしばらく、彼女木蓮は若気の恥など忘れたごとく、しんと静まりかえっていた。
今日はひと月おくれの雛まつり。久方にペンを休めてふと見ると、木はいつのまにかヒワ色の巻葉をつんつん伸ばしはじめている。
今年こそ彼女の正体を見届けてやろう。
去年の春も実はそう思ったのだが、さくらが咲いてさくらが散って、あじさいが咲いて次々と紫色の雨好きな花にみとれているうちに顔もあげられぬ炎帝と邂逅《かいこう》し、ひまわりカンナきらいな花……とほざいていると六甲の山々が「いろは紅葉」のながし目で。それではとケーブルカーで有馬の湯。有馬には思わぬ雪が降りつもっての雪見酒。
つまり、浮気ざんまいのあけくれに、私は北窓の木蓮の「その後」をついぞ見ないで来てしまったのである。
どんどんふくらむ白いつぼみは、私に一年間の怠惰を思い知れとばかりに春を告げて開いた。そうして散った。
私は木蓮と辛夷《こぶし》の花の見分けがつかない。もしかすると初々しい巻葉のこれは木蓮ではなく辛夷かもしれないぞ。
世界大百科事典のほこりを払ってまず「もくれん」をひく。
──庭木として広く裁植される中国原産のモクレン科の大低木(はい、たしかに庭に植えてあります)。花は春、葉に先だって開き(そのとおり)、枝先に北向きに直立し(うん? おかしいな、花は南側の私に向かって咲いたですよ)、細い鐘形で正開しない。
だめだ。ほとんど絶望的。
よいしょと、こんどは「こぶし」をひく。
──早春、葉がまだ伸びないうちに径十センチばかりの肉質六弁の白い花が咲く。山野にみられる落葉高木、モクレン科。
「やつはこぶしであった」
私は広くもない仕事部屋を熊のごとく歩きまわって歎息した。
秋十月を待って実をたしかめるまでもないだろう。その果実とて、木蓮は卵状長楕円形、辛夷はそれが多少湾曲するだけのちがい。ともに赤い種子を白い糸でぶらさげるというのである。
度が合わなくなった私のメガネでは果実の判別はつかない。それに正開して散った現実と「木の高さは八〜十メートルにおよぶ」というのが決定的である。私の北窓は三階。そこにすわって目線まっすぐの花ざかりだったのだもの。庭のあるお隣りは和風二階家、その屋根よりも高いのだもの。
私はほうっと息をついて、しばらくは誰にも会いたくないと思った。
木蓮が辛夷であったからといって、べつに私の人生が変わるわけではない。
しかし、この裏切られた思いを何と表現すればよいのだろう。
むかし、早良葉という人からハガキをもらって、その簡にして要を得た書きっぷりに一も二もなく惚れてペンフレンドになった。
私はハヤ・リョウヨウという男性をだんだん慕《した》わしく思うようになった。
ペンフレンドは会わないのがよいのだ。そうわかっていて会いたくなるのがまたペンフレンドというものである。
三年後、私たちは会った。
もうおわかりいただけたと思う。サワラ・ヨウさんは女性だったのである。
そのときの失望ともすこしちがう花まちがい。
部屋ぬちを歩きまわっているうちにハタと思いあたる絶望がみつかった。
これも昔の大昔、吉井川河口の新田地帯に育った私は山を知らずに大きくなった。だから、バス旅行か何かで初めて瀧というものを見たときの「あッ」という思いは山育ちの人には笑止の沙汰ほど大仰なものだったのである。私は瀧に強烈なエロチシズムを感じた。それは小さなチョロ瀧において極まる、私だけの発見であり秘密だったのである。
それが粉砕したのは円地文子の本であった。何という本であったか、あまりの立腹に忘れ果てたが、私とおなじ感覚を持つ女がいて、瀧のエロチシズムがすでに本に書かれているという事実は、私を完全にノックアウトしたのであった。
私はやっと机の前にもどった。辛夷という名の木蓮の木はしずかに、しずかに美しい葉を育てている。
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