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馬を殺したからす

时间: 2022-09-01    进入日语论坛
核心提示:北きたの海うみの方ほうにすんでいたかもめは、ふとして思おもいたって南みなみの方ほうへと飛とんできました。途中とちゅうでに
(单词翻译:双击或拖选)

きたうみほうにすんでいたかもめは、ふとしておもいたってみなみほうへとんできました。途中とちゅうでにぎやかなまちしたほうにあるのをました。そこにはおほりがあって、みずがなみなみとあおく、あふれるばかりでありましたから、しばらくそこへりてらしました。
このまちは、このくにの一ばんみやこでありまして、人々ひとびとはそのほりのなかにすんでいるうおることができなく、またりているとりつことができないおきてでありましたから、かもめには、このうえなく都合つごうがよく、らしいいところでありました。
ほりのなかにいるうおは、それはきたうみにいるうおあじとはくらべものになりません。どろくさくてほねかとうございましたけれど、容易よういることができましたので、荒波あらなみうえで、仕事しごとするようにほねをおらなくてすんだのであります。
かもめは、もうずっとみなみほうへいくというかんがえはててしまいました。だいいち、人間にんげんというものが、ここにいても、すこしもおそろしくありませんので、みずもそのわりあいにあたたかであるし、そのとしふゆは、このまちなからそうとかんがえました。
かもめは、さまざまなまちのにぎやかな光景こうけいや、できごとなどを見守みまもりました。そして、こんなおもしろいところがこの世界せかいにあるということを、ほかのとりらはまだらないだろう。よく、よく、このさま記憶きおくしておいて、かれらにおしえてやらなければならないなどと空想くうそうしました。
さむふゆぎて、はるになると、ほりばたのやなぎをふきました。そして、さくらはなうつくしくきました。このころが、みやこもいちばんにぎやかな時分じぶんとみえて、去年きょねんあき以来いらいなかった景気けいきでございました。
うかうかとしているうちに、はるぎてしまいました。子供こどもらがそれでもかくれてこのほりにときどきりなどにやってくるなつとなりました。いままで、かもめはなんの不足ふそくもなく、またかんがえることもなくらしてきましたが、このころからようやくかんがえはじめました。それは、ほりのみずなかにすんでいたかもめは、ふたたびあおい、あおい、うみこいしくなったからです。かぜつよいて、なみ岩角いわかどしろく、ゆきとなってはねがり、地平線ちへいせんくろくうねうねとしてえるうみこいしくなりました。
かもめは、きたほう故郷こきょうかえろうとこころにきめました。そして、その名残なごりにこのまちなか光景こうけいをできるだけよくておこうとおもいました。ある太陽たいようかがやく、よくれた午前ごぜんのことでありました。しろいかもめは、みやこそらひとまわりいたしました。すると、おおきなのこんもりとしたやしろ境内けいだいしたにながめました。子供こどもらがまめって、地面じめんうえむらがっているはとにげやっていました。
かもめはそれをると、まったくおどろきました。みやこというところは不思議ふしぎなところだ。ここにさえいれば、あそんでいてもらしていくことができるのだおもいました。
ついに、このかもめは、きたをさしてながたびのぼりました。かれは、去年きょねんきた時分じぶんのことなどをおもしていろいろの感慨かんがいにふけりました。高山こうざんを一つえて、もうやがてこうにうみえようとするころでありました。かもめは、一のからすにあいました。
からすはカーカーとなきながら、やはりさとほうをさしてんでゆくところでありました。おしゃべりのからすはすぐ、自分じぶんうえんでゆくかもめをつけて、こえをかけずにいられませんでした。
「かもめさん、かもめさん、たいへんにおつかれのようだが、どこへいっておいでになりました。」と、からすはいました。
すると、かもめは、いそつばさをゆるくして、からすとしばらくのあいだ道連みちづれになりました。
わたしは二、三にちまえに、ずっとみなみみやこから出立しゅったつしました。去年きょねんふゆはにぎやかなみやこおくりました。もうなつになって、きたうみこいしくなったのでかえるところですよ。」と、かもめはこたえました。
「それは、いいことをなさいましたね。わたしなどは、いつもこんなさびしい田舎いなかにばかりらしています。いつになったら、そんなところへいってみられるかわかりません。」と、からすは歎息たんそくいたしました。
「なんのいけないことがあるもんですか、あなたのこころがけですよ。幾日いくにちも、幾日いくにちも、みなみをさしてゆけば、しぜんにいかれますよ。」と、かもめはいいました。
「たとえ、そこへいっても、どうしてべていけるかわかりません。いしげつけられたり、みんなにかたきにされていじめられるばかりです。」と、からすは不運ふうんなげきました。
かもめは、みやこでは、はとがみんなにかわいがられて、子供こどもらからまめをもらって、平和へいわにそのあそらしていることをはなしました。
「どうしてほかのとりは、みんなそう幸福こうふくなのでしょう。」と、からすはうらやみました。
するとかもめは、からすをなぐさめて、いいますのには、
「からすさん、わたしたはとのなかには、ちょうどあなたのように、いろくろえるのがありましたよ。だから、あなたもらぬかおをして、その仲間入なかまいりをしていられたら、だれも不思議ふしぎおもうものはありますまい。ひとつみやこにいって、大胆だいたんにそうなさってはいかがですか。」と、かもめはいいました。
「そうですか、ひとつかんがえてみましょう。」と、からすはこたえました。
やがて、かもめとからすとは、わかれてしまいました。かもめはうみほうにゆき、からすはさとほうにゆきました。かもめは、いつしか、むかしおな生活せいかつをしましたけれど、からすはさとへいっても、あまりおもしろいことはありませんでした。いつか、かもめからいたことをおもして、
みやこへいって、はとの仲間入なかまいりをすれば、なにもせんでらくらしていける。」と、かんがえましたので、ついにそのになって、みなみかって旅立たびだつことにいたしました。
からすは、かもめのようにそらたかく、またはやぶことはできませんでした。それでも幾日いくにちかかかって、にぎやかなみやこ到着とうちゃくいたしました。
「なるほど、にぎやかなきれいなところだ。いつも、おまつさわぎをしているところだ。」と、おもいました。
からすは、さっそく、やしろ境内けいだいんでゆきました。するといままで、見慣みなれないとりちかくにやってきたので、よわいはとは、一さわぎたてました。からすは、これはこまったとおもいました。るとかもめのいったように、くろっぽいいろのはともいました。これはだんだんかれらにれていかなければならぬと、はじめははなれたところで、からすは地面じめんりてさがしていました。
しかし、いくらおなじようにくろっぽくても、からすとはととは、ちょっとてもよくわかります。子供こどもらは、からすをつけると、いしひろっていっせいにげつけました。
いろいろのことをおもって、茫然ぼうぜんとしていましたからすは、不意ふいいしんできたので、びっくりしてがりました。そして、えだまってしたをながめますと、子供こどもらは、なお自分じぶんがけていしげるのであります。
からすはしかたなく、そのやしろ境内けいだいからしました。けれど、どこへいっても、自分じぶん仲間なかまれてくれるはとのれはありませんでした。そして、人間にんげんつけられるとにくまれ、またわれました。ちょうどそのことはさとにいたときもおなじことです。むしろかえって、みやこのほうがいっそうひどいようにおもわれました。
からすは、はとの仲間入なかまいりすることは断念だんねんしましたが、みやこそらけむりでいつもにごっていて、それに、さがすようなごみためがいたってすくないので、そこにいるあいだえをしのんでいなければなりませんでした。からすは、このみやこがちっとも自分じぶんにとって、いいところではありませんでした。
「こんなことになるのも、みんなかもめのいったことをしんじたからだ。」と、かれは、かもめをうらみました。
しかたなしにからすは、ふたたび、自分じぶんまれたさとしてかえってゆきました。こんなことがあってから、このからすは、ひとをおだてたり、うそをいってこまらせたりすることをよろこぶようになりました。それもまったくかもめの言葉ことばしんじて、とんだめにあった復讐ふくしゅうかってしたのでございます。
ある、からすはうえや、はたけうえんで田舎路いなかみちをきかかりますと、並木なみきうしがつながれていました。そのからだくろしろぶちでありました。そして、おもをしょっていました。これをると、さっそく、からすはそのえだまりました。そして、したおろしながら、
うしさん、うしさん、主人しゅじんはどこへいった。」ときました。
うしは、おだやかなおおきなをみはって、遠方えんぽうひかりらされてあつそうな景色けしきていましたが、からすがあたまうえでこういますと、
おれ主人しゅじんは、あちらの茶屋ちゃや昼寝ひるねをしているのだ。」とこたえました。
これをくとからすは、
「なんて人間にんげんというやつは自分じぶんかってなんだ。おまえさんなぞは、人間にんげん幾倍いくばいとなくちからつよいじゃないか。なぜこんなつななんかってしまって、やまなかげていかないのだね。やまなかはいりゃ、くさもあるし、みずもあるし、もあるし、あそんでいてらくらしてゆけるじゃないか。そして、獣物けものおうさまにならないともかぎらないじゃないか。」と、おだてました。
うしだまって、からすのいうことをいていましたが、なんとなくそれをしんじることができませんでした。
「いったい、そんなことができるだろうか。」といいました。
「なんでできないことがあるものか、おまえさんたちは臆病おくびょうなんだ。」と、からすはいいました。
先祖代々せんぞだいだいから、まだそんな乱暴らんぼうなことをしたものをかない。」と、うしこたえました。
「やればできたんだが、みなおまえさんのような弱虫よわむしばかりだ。」と、からすはいいました。
ひとのいいうしも、ついにはらてずにはいられませんでした。
ちいさなくせに、なまいきをいうな。」と、うえいてふと鼻息はないききかけますと、からすはびっくりして、
「ばか、ばか。」と、悪口あっこうをいってってしまいました。
からすは、ついにうしをおだてそこないました。そしてや、はたけうえんできますと、今度こんどは一ぴきのうま並木なみきにつながれていました。そのうませいたかい、まだ年若としわか赤毛あかげうまであります。からすはさっそく、そののいちばんしたえだまりました。うまは、あしもとのくさべていました。
「おうまさん、おうまさん、あなたがほんとうにかけしたら、どんなにはやいでしょうね。わたしはあなたのようなりっぱなおうまさんが、こうしてつなしばられているのが不思議ふしぎでならないのですよ。なぜこんなところにまごまごして、あさからばんまでおもをしょわされていなければならないんですか。」と、からすがいいました。
「おまえはだれかとおもったらからすか、よくおれあしはやいことをっているな。ほんとうにかけしたら、どんなものでもいつけるものでない。けれどしたって、いきどころがないじゃないか、それとも、どこかいいところがあるというのか。」と、わかうまかえしました。
「それはありますよ。だれも束縛そくばくするようなもののいない、そして、くらよるというようなものもない、まったく自由じゆうで、一にちあかるいひるばかりのよいくにがありますよ。」
「それは、いったいどこだ。」
「それですか、西にしあか夕焼ゆうやけのするくにです。毎日まいにち、あなたはそのほうるでしょう。いつもそのほうると、愉快ゆかいにはなりませんか。」と、からすはいいました。
愉快ゆかいになるよ。おれ夕焼ゆうやけのほうるのが大好だいすきだ。けれど、そんないいくにがあるなどとはらなかった。おまえは、ほんとうにいっててきたのか。」
わたしは、太陽たいようちかくまでいっててきました。」と、からすはいいました。
太陽たいようちかくへ? 真紅まっかだろうな。しかしおまえはつばさがあるからゆける、おれにはつばさがない。」と、うまかなしそうにこたえました。
「そのかわり、はやあしがあるじゃありませんか。どんなところでも、あなたならせないことはありません。」と、からすはいいました。
「たいていのところならせるつもりだ。」と、うまこたえて、しばらくかんがえていました。
からすは、今度こんどはうまくやったなと、たかいところへんでいって、じっとうまのすることをていました。すると、うま不意ふいにはねだしました。そして脊中せなかんであった荷物にもつをみんなとして、つなはなって、となくはやしとなくかけてゆきました。からすは、うまがしまいにどうするかそらんでいてゆきました。うまはついにはやしや、や、おかをえて、うみほとりにてしまいました。はようやくれかかって、うみのかなたはあかく、夕焼ゆうやけがしていました。うまはじっとそのほうて、かなたのくににあこがれながらも、どうすることもできませんでした。
「やってみろ! おまえならこのうみせるだろう。」と、このとき、そらでからすがいいました。
うまは、ほんとうにそうかとおもいました。そして、一思ひとおもいにうみそうとはねがりました。けれど、二けんとはべず、うみなかちてんでしまいました。これをたからすは、
「あほう、あほう。」といいながら、んでいってしまいました。
そのとしれ、大雪おおゆきってさむばんに、からすは一つのうまやつけて、その戸口とぐちにきて、うすぐらうちをうかがい、一宿やどもとめようとはいりました。するとそこにはしろくろのぶちのふとったうしがねていました。
「おまえは、いつかのからすじゃないか。あのとき、おまえのおだてにのってやまなかはいってみろ、この大雪おおゆきに、どうしてやすらかにねることができるか。おまえのようなうそつきには、宿やどしてやることはできない。」と、うしいたてました。
からすは、大雪おおゆきなかをあてもなく、そこからったのであります。
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