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ふるさとの林の歌(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:ふるさとの林の歌小川未明娘むすめは毎日まいにち山やまへゆきました。枯かれ枝えだを集あつめたり、また木きの実みを拾ひろった
(单词翻译:双击或拖选)
 

ふるさとの林の歌

小川未明


むすめ毎日まいにちやまへゆきました。えだあつめたり、またひろったりしました。
そのうちに、ゆきって、あたりをしろにうずめてしまいました。むすめうちなかおや手助てだすけをして、はやはるのくるのをったのであります。それは、どんなにどおしいことでありましたでしょう。やがて、物憂ものうい、くらふゆが、きたへ、きたへとにげていきました。
はるになると、ゆきがだんだんえてしまいました。にも、やまにも、いろいろなはなきました。その季節きせつぎると、やまには、こんもりとしたみどりがしげって、あたたかな心地ここちよいかぜおかにもふもとにもわたりました。大空おおぞらうつくしくれて、うららかなひかりがみなぎったのであります。
むすめは、ほがらかなこえうたをうたいながら、やまはいってゆきました。はるなつあきふゆはこうしてぎました。そして、むすめは、だんだんおおきくなったのであります。
あるのこと、むすめは、やまはやしなかへいつものごとくはいってゆきました。すると一のかわいらしい小鳥ことりが、いいこえいていました。彼女かのじょは、しばらくまって、その小鳥ことりえだまっていているのを見守みまもっていましたが、
「ああ、なんというかわいらしい小鳥ことりだろう。あのくろのきれいなこと、ほんとうにほんとうにかわいらしいこと。」と、彼女かのじょはいいました。
すると、この言葉ことばきつけて、小鳥ことりうたをやめて、じっとむすめほうをながめていました。
「どうかわたしをかわいがってください。」と、小鳥ことりはいいました。
わたしは、兄弟きょうだいも、姉妹しまいもないひとりぼっちなのです。毎日まいにち、このはやしなかをさまよって、ひとりでさびしくうたっています。」と、小鳥ことりはつづけていいました。
むすめは、小鳥ことりのいうことをくと、
「かわいい小鳥ことりさん、わたしは、かわいがってあげますよ。しかしどうして、そんなにおまえさんのは、すきとおるようにうつくしいんでしょう。」といました。
「それは、わたしは、まれてから、まだ、きたないものをたことがないからです。んだおかあさんは、わたしかって、けっして、まちほうへいってはならない。もしまちほうんでいって、そこでいろいろなものをると、おまえのはそのときからにごってしまう。またひかりうしなってしまう。おまえは、この青々あおあおとした松林まつばやしきよ谷川たにがわながれよりほかにてはならない。もし、わたしのいうことをまもれば、おまえはいつまでもわかく、うつくしいともうしました。」
「まあ、おまえさんは、そのおかあさんのおおせをまもっているのですか。」と、むすめ小鳥ことりつめました。
「さようでございます。わたしのおともだちは、まちほうとんんでゆきました。そして、いったぎりでかえってこないものもあります。また、かえってきて、しばらくこのはやしなかまっていたものもありますが、ながくはしんぼうがしきれずに、ふたたびかなたのそらしたってんでゆきました。こうしてかけていったものも、それきりかえってきませんでした。」と、小鳥ことりこたえました。
「それで、まちてきた、おともだちのいろはにごっていましたか。」と、むすめは、熱心ねっしんにききました。
「それは、わたしにはわかりません。けれど、たえず、そのなかには、ちらちらとおちつかないかげのようなものがただよっていました。そしてともだちのはなしには、まちうつくしかったもの、不思議ふしぎなもの、またおそろしかったものがまぼろしえてしかたがないといっていましたから、多分たぶん、そんなものにこころおびやかされているのだろうとおもいます。」
むすめは、じっとそこにまって小鳥ことりのいうことをきいて、かんがえこんでいました。
「ああ、わたしも、まだまちたことがないの。」と、ためいきをもらしながら、いいました。
わたしは、けっしてまちません、おかあさんのいいつけをまもって、このはやしなかで一しょうおくろうとおもっています。どうぞひとりぼっちのわたしをかわいがってください。」と、小鳥ことりねがいました。
むすめは、やさしいつきで小鳥ことりをながめながら、
「ほんとうにおまえのはかわいい、うつくしいだこと。」と、とれていました。
「どうかわたしをかわいがってください。そうすれば、わたしは、あなたになんでもさしあげます。このつばさも、このこえも、このもみんなあなたにあげます。どうぞわたしをかわいがってくださいまし。」と、小鳥ことりはたのみました。
「ほんとうにやさしい小鳥ことりだこと。わたしは、どんなにおまえさんがかわいいかしれない。わたしは、なんにもほしくないが、ただおまえさんののようにうつくしいがほしい、そうしたら、わたしは、どんなにうつくしくなることでしょう。」と、むすめは、うっとりとしてこころなか自分じぶん姿すがた空想くうそうえがきながらいいました。
小鳥ことりは、しばらくあたまをかしげていましたが、
わたしも、つばさも、またこえも、そして大事だいじいのちも、みんなあなたのものです。わたしは、これから、あなたのむねなかきます。」といいました。
「ああ、うれしいこと。」
わたしは、もっと、もっと、なんでもあげたいのです。けれど、もうこれよりはほかにっていません。そして、このはやしなかにはわたしいのちよりとうといというほどのものはないようであります。わたしは、いちばん大事だいじにしていたものをみんなあなたにあげてしまいます。どうか、あなたは、毎日まいにちのように、このはやしなかへきて、わたしおもしてください、いつまでもおもしてください。そして、いいこえでうたってください。きっとあなたは、いいこえます、そして、わたしまれてんだ、このはやしを、いつまでも見捨みすてないでください。そうでしたらわたしは、どんなに幸福こうふくでありましょう。わたしは、いつまでもあなたのむねなかきています。わたしちいさなあか心臓しんぞうは、あなたのこころ宿やどって呼吸こきゅうしています。」と、小鳥ことりはいいました。
「もし、そんなことができたら。」と、むすめは、小鳥ことりかがやひとみ見上みあげました。
「ほんとうにうつくしいといって、おまえのよりうつくしいものがこの世界せかいにあろうか、なにがいい音色ねいろだといって、おまえのこえより美妙びみょうなものがこの世界せかいにあるはずがない。」と、むすめはためためをもらしました。
わたしはいつまでも、このはやしなかで、うたってらします。そして、おまえのことを毎日まいにちおもうでありましょう。」
「どうか、わたし永久えいきゅうあいしてください。」
「また、明日あす、おまえとたのしくはなしをしましょうね。」と、むすめはいいました。
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