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一本の銀の針(1)

时间: 2022-09-01    进入日语论坛
核心提示:一兄あにと妹いもうとは、海岸かいがんの砂原すなはらの上うえで、いつも仲なかよく遊あそんでいました。おじいさんは、このあた
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あにいもうとは、海岸かいがん砂原すなはらうえで、いつもなかよくあそんでいました。
おじいさんは、このあたりでは、だれ一人ひとり、「うみおうさま」といえば、らぬものはないほど、船乗ふなのりの名人めいじんでありました。ほとんど一しょううみうえらして、おもしろいこと、つらいことのかずかずをあじわってきましたが、いつしかとしって、船乗ふなのりをやめてしまいました。
おじいさんに、一人ひとりのせがれがありました。やはり、おじいさんとおなじように船乗ふなのりでした。あるのこと、うちに、おじいさんと、女房にょうぼう二人ふたり子供こどものこして、おきほうへとかけてゆきました。
おりしく、そのばんに、ひどいあらしがいて、うみなかは、さながら渦巻うずまきかえるようにられたのでした。家族かぞくのものは心配しんぱいしました。そして、どうか無事ぶじかえってくれるようにとっていましたけれど、ついに、うみていったせがれは、それぎりかえってきませんでした。おじいさんは、あのあらしのために、破船はせんしてんでしまったのだろうとおもいましたが、女房にょうぼうや、まごたちが、かなしむのをたまらなくおもって、
「どこかへ避難ひなんしているかもしれない。もう二、三にちってみよう。」といいました。
人間にんげんというものは、どんな不幸ふこうあっても、日数ひかずのたつうちには、だんだんわすれてしまうものであったからです。
二日ふつかたっても、三日みっかたっても、せがれのったふねはもどってきませんでした。あるのこと、そのふね破片はへんなみせられて、浜辺はまべがりました。それをたときに、どんなにおじいさんは、かなしんだでありましょう。せがれの女房にょうぼうはあまりのかなしみから、ついに病気びょうきとなり、それがもととなってんでしまいました。
二人ふたり子供こどもは、ちちうしない、ははわかれて、そのときから、おじいさんにそだてられたのであります。うみうえいてくるかぜが、コトコトとまどをたたくおとくと、おじいさんは、それでもせがれがきていてかえってきたのではないかとみみかたむけました。また、夜中よなかに、なみおとが、すすりくように、かすかにみみにひびくと、おじいさんは、せがれの女房にょうぼうのことをおもしました。それにつけてもおじいさんは、二人ふたりまごたちをかわいがったのであります。
月日つきひは、いつのまにかたってしまいました。あにいもうと二人ふたりは、なかよく、海岸かいがん砂原すなはらで、しろに、に、いろいろのはなをつんだりしてあそんでいますうちに、おおきくなりました。
二人ふたりは、両親りょうしんがなかったけれど、おじいさんがかわいがってくだされたので、幸福こうふくでありました。
あには、だんだんとしると、自分じぶんもどうか船乗ふなのりになりたいとおもいました。おじいさんは、大事だいじなせがれがうみんでから、どうしてもまご船乗ふなのりにさせようとはおもいませんでした。
うみおうさま」と、おじいさんが、みんなからいわれたということをくと、あには、どうかして自分じぶん船乗ふなのりの名人めいじんになりたいものだとかんがえたのです。
ぼくは、どうしてもおじいさんにおねがいして、船乗ふなのりにしてもらいたい。」と、あには、いもうとかっていいました。
にいさんが、うみへいってしまわれたら、わたしはどんなにさびしいかしれない。」と、いもうとは、はやなみだぐんでこたえました。
いもうとたいして、やさしかったあには、なぐさめるように、
「あのとおうみのあちらには、不思議ふしぎしまがあって、そこへゆけば、いろいろのめずらしいものがあるというから、それをお土産みやげってきてあげよう。」といいました。
いもうとは、おじいさんからも、その不思議ふしぎしまはなしいていました。うみなかにすんでいるけだものきばや、金色きんいろをしたとりたまごや、香水こうすいれるくさや、よるになるといいこえして、うたをうたうかいなどがあるということをいていましたから、
にいさん、わたしに、金色きんいろとりたまごと、よるになるとうたうたかいを、お土産みやげにかならずってきてください。」とたのみました。
金色きんいろたまごは、とりにあたためさして、うつくしいとりにかえさせようとおもったからです。
「じゃ、わすれずにってきてあげるから、おまえもおじいさんに、ぼくのぞみをかなえてもらうようにたのんでおくれ。」と、あにはいいました。
いもうとは、承知しょうちして、あにがおじいさんにたのんだときに、自分じぶんもいっしょになってねがったのであります。
おじいさんは、すぐにはうんとはいいませんでした。
「おじいさんを、みんながうみおうさまといっていたということをきました。どうか、ぼくを、だい二のうみおうさまにさしてください。」と、あにはいいました。
「おまえが、その決心けっしんをしてくれるのはうれしいが、またあらしにあってふねがこわれたら、とりかえしのつかないことになってしまう。」と、おじいさんは、思案しあんをしました。しかし、ついに、まごたちのいうことをゆるしてやりました。
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