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宝石商(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:宝石商小川未明昔むかし、北きたの寒さむい国くにに、珍めずらしい宝石ほうせきが、海うみからも、また山やまからもいろいろたく
(单词翻译:双击或拖选)
 

ボールの行方

小川未明


しょうちゃんは、いまに野球やきゅうのピッチャーになるといっています。それで、ボールをなげてあそぶのがだいすきですが、よくボールをなくしました。
「おかあさん、ボールをなくしたから、っておくれよ。」と、学校がっこうへいこうとしてランドセルをかたにかけながら、いいました。
「また、なくしたのですか。二、三日前にちまえったばかりじゃありませんか。」
ぼく、ボールがないとさびしいんだもの。」
「いいえ、そう毎日まいにち、ボールばかりってあげられません。」と、おかあさんはおっしゃいました。
「ねえ、おかあさん、もうなくなさないから。こんどから、きっとなくなさないから。」
「なくなさないと、なんどいいましたか。ものを粗末そまつにするからですよ。」
粗末そまつになんかしないよ。だって、どっかへいってしまうんだもの。」
「おとなりのまことさんなんか、おちついていらっしゃるから、おまえみたいに、そうものをおなくしになりませんよ。」と、おかあさんは、となりのまことくんのことをほめられました。
まことくんだって、なくすやい。昨日きのううわぐつをかたっぽおとしてきて、おかあさんにしかられていたから。」と、しょうちゃんはいいました。
「じゃ、今日きょうってあげますから、まえをいておきなさい。」といって、おかあさんはボールをうおかねをくださいました。
「ありがとう!」と、しょうちゃんはいただいて、元気げんきよくかけました。
「やさしいいいおかあさんだなあ。」と、しょうちゃんはこころなかおもったのです。

しょうちゃんはあたらしいボールをって、それに「二ねんくみ 山本正治やまもとしょうじ」ときました。しょうちゃんの帽子ぼうしにもハンカチにも、けしゴムにも、みんなそういてありました。だから、学校がっこうなかでおとせば、ひろったひと先生せんせいにとどけてくれますので、また自分じぶんのところへもどってきました。たとえ学校がっこうそとでも、正直しょうじきひとなら、
「ああ、あの学校がっこう生徒せいとさんがおとしたのだな。」といって、学校がっこうへとどけてくれました。
しょうちゃんはおうちへかえって、「ただいま」をすると、おかあさんのところへいって今日きょうったボールをおせしました。
「いいんですね。まえをきましたか。今年ことしから二年生ねんせいですよ。」と、おかあさんが注意ちゅういをなさいますと、しょうちゃんは、
「ほら、二ねんくみいてあるだろう。」と、いって、おかあさんにボールをもう一どせました。
しょうちゃんはぼんやりしているから、また一ねんきゃしないかとおもったのよ。」
そのとき、おねえさんが、
「ね、しょうちゃん、ピッチャーは、どんなかっこうをしてボールをげるの。」と、いいました。
わらうから、やだあい。」
わらわないから、ようおしえてよ。」と、おねえさんはいいました。
かあさんもわらいだしそうなかおつきをむりにこらえてていらっしゃいますと、しょうちゃんはボールをった右手みぎてをぐるぐるっとあたまうえでまわして、片手かたてをあげてげるまねをしました。
「まあ、すてきね。」
ぼくたまは、それはカーブがあるんだから。」
「あまりありすぎて、たまをなくすんでしょ。」と、おかあさんがおっしゃったので、おねえさんは、こえをたててわらいました。

はらっぱへいってすればいいのに、しょうちゃんはせまい往来おうらいで、ちいさい花子はなこさんを相手あいてにキャッチボールをやっていると、しょうちゃんのげたボールが、からたちの垣根かきねをこして、こうのにわにはいってしまいました。
こまったわね、しょうちゃん。」と、花子はなさんがいいました。
「どこへはいったんだろうな。」と、しょうちゃんは、からたちの垣根かきねのあいだから、にわなかていました。
すると、ちょうどのよくあたるあちらのえんがわで、おばさんがあかちゃんのおしめをかえてやっているところでした。
にわには、かきがあかくうれておりました。あかちゃんは、なにがおかしいのか、けたけたこえしてわらっていました。
しょうちゃんはボールのことなどわすれてしまって、かわいいあかちゃんのほうとれていました。
あかちゃん、かわいいな。」と、花子はなこさんのほういていいました。
「どれ、わたしにもせて。」といって、花子はなこさんも垣根かきねのあいだからのぞいてました。
ぼくんちにも、あんなあかちゃんあるといいのだがな。」と、しょうちゃんはまたのぞいてますと、あかちゃんは、おしめをかえてしまって、おばさんにだっこして、わらっていました。
しょうちゃんはボールのことをやっとおもいだして、
花子はなこさん、ひろっておいでよ。」と、いいました。
わたし、いやよ。しょうちゃんがいいわ。」
花子はなこさん、はやくいっておいでよ。」
「おばさん、まりがはいったの。」と、花子はなこさんがいいました。
すると、おとここえで、
「いま、ひろってあげますよ。」といって、おじさんがひろって、こちらへげてくださいました。

あちらから、太郎たろうさんとまことさんがやってきました。
はらっぱへいって、キャッチボールをしない?」と、いいました。
「ああ、しよう。」
しょうちゃんはいきかけて、花子はなこさんに、
花子はなこさんもおいでよ。」と、いいました。
わたし、おうちへかえるわ。」
「また、あしたあそぼうね。」
にんは、はらっぱへきました。太郎たろうさんのたまは、いちばんつよいのです。つぎが、しょうちゃんのたまです。まことさんのはよわくてそれたりするので、
「もっといいたまをおしよ。」と、太郎たろうさんがいいました。
このとき、こうで三にんのまりげをていた少年しょうねんが、
ぼくもなかまにれてくれない?」と、いいました。
しょうちゃんは、太郎たろうさんとまことさんに、
「いいだろう?」と、ききました。
「ああ、いいよ。」
そこで、四にんはかわるがわるキャッチボールをしました。少年しょうねんのたまはなかなかつよいので、しょうちゃんやまことさんは、たびたびけそこないました。
きみのたまは、すごいんだね。」と、しょうちゃんが感心かんしんすると、少年しょうねんはもっともっとつよいたまをそうとしました。
そのうちにわるいたまをしたので、ボールはとおくへころがっていって、みんながそのあとをいかけてさがしたけれど、わからなくなりました。
「あんなわるいたまをすんだもの。」と、太郎たろうさんがいいました。
少年しょうねんかおあかくして、
ぼく弁償べんしょうしてあげるよ。」と、いいました。

きみ、あやまったらいいだろう。」と、まことさんがいいました。
ぼく、なくしてすまないとおもうよ。だけど、おかねっているから、ってかえすよ。」と、その少年しょうねんはいいました。
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