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子ざると母ざる

时间: 2022-11-01    进入日语论坛
核心提示:子ざると母ざる母が子供に読んできかせてやる童話小川未明ある日ひ、かりゅうどが山やまへいくと、子こざるが木きの実みを拾ひろ
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子ざると母ざる

母が子供に読んできかせてやる童話

小川未明


ある、かりゅうどがやまへいくと、ざるがひろってたべていました。もうじきにふゆがくるので、あかいろづいて、いろいろの小鳥ことりたちが、チッ、チッ、といっていていました。
かりゅうどは、ざるをつけると、足音あしおとをたてぬように、近寄ちかよりました。
「はてな、ざるひとりとみえるな。おやざるはどうしたろう?」
あたりをまわしたけれど、ははざるの姿すがたえませんでした。
「きっとざるめが、ははざるのらぬまに、あそびにたのだ。鉄砲てっぽうつのは、かわいそうだ。どれ、つかまえてやろう。」
かりゅうどは、こしにつけていた、つなで、おとしをつくりました。そして、自分じぶんは、そのはしをにぎって、かげかくれていました。
それともらずにざるは、をさがすのに夢中むちゅうになっていました。そのうちおとしのなかはいって、はっとおもうまに、ざるは、かりゅうどのらえられてしまいました。
かりゅうどは、むらかえると、ざるをいえまえにつないでおきました。すこしらして、まちりにいこうとおもったのです。
むら子供こどもたちは、見物けんぶつにきて、いもげてやったり、かきをげてやったりしました。ざるは、上手じょうずにそれをけて、べていましたが、やまはやしで、ひろってたべたのようにおいしくありませんでした。さむ西風にしかぜいて、えだうごくのをると、やまのおうちこいしくなるのでした。
「おうちかえりたいな。ひとりでは、みちがわからないし、自分じぶんちからでは、こしについているくさりることができない。」
ざるのからは、あつなみだがわきました。
そこへ、つえをついて、しろいひげのはえた、おじいさんがきました。
まごたちがほしがるので、このざるを、わたしってくださらないか。」といいました。
「おお、酒屋さかやのご隠居いんきょさんですか。あなたが、このさるをってくだきれば、わたしは、まちっていくほねおりなしにすみます。」と、かりゅうどは、こたえました。
ざるは、こうして、そのから、酒屋さかやしょうちゃんや、かねさんのあそ相手あいてとなったのです。
かねさんも、しょうちゃんも、どちらも欲張よくばりでした。
「このおさるは、ぼくのだよ。」と、しょうちゃんがいうと、
「いいえ、このおさるさんは、わたしのよ。」と、かねさんがいいました。
「ちがうよ、ぼくのだから。」
二人ふたりは、たがいにいいあらそって、祖父おじいさんのところへききにきました。
祖父おじいさんは、ただわらって、返事へんじにおこまりになりました。
「さあ、だれのだろうな。それは、おさるさんにきいてみるのが、いちばんいい。」と、祖父おじいさんは、おっしゃいました。二人ふたりは、こんどは、ざるのところへまいりました。
「おさるさん、ぼくのだねえ。」と、しょうちゃんが、いいました。
「おさるさん、わたしのだわねえ。」と、かねさんが、いいました。
りこうなざるも、やはり返事へんじこまって、しばらくあたまをかしげてかんがえていましたが、
わたしは、わたしをいちばんかわいがってくださるかたのものになります。」と、こたえたのです。
しょうちゃんにも、かねさんにも、ざるの返事へんじが、わかったでしょうか?
やまでは、ははざるが、かりゅうどにつれられていったから、よるひるざるのことをおもってわすれるがありませんでした。
「いまごろはどうしているだろう。あれほど、とおくへひとりであそびにいってはならぬといったのに、いうことをきかないばかりにこんなことになってしまった。達者たっしゃでいてくれるだろうか。」と、さとほう心配しんぱいしていました。
おもいがけなく、やまのからすが、ははざるのそばへんできて、
「ご心配しんぱいなさいますな、ざるさんは、お達者たっしゃで、かわいがられていますよ。」と、自分じぶんてきたことをはなしてくれました。
ははざるは、それをきくと、どんなによろこんだでありましょう。いくたびもしんせつなからすにかって、おれいをいいました。そのうちにゆきりはじめました。やまも、野原のはらも、しろになりました。
やまのからすから、ざるのいるところをいたははざるは、あるばんやまくだって、ゆき野原のはらあるいて、ざるのところへたずねてまいりました。
それは、さむばんで、ざるは、はこなかのわらにうずまって、ねむっていました。すると、だれかこすものがあります。おどろいて、をさますと、いままでゆめていた、なつかしい母親ははおやが、かおうえからのぞいているのでありました。
「おかあさん!」
「しっ、しずかに、いま、おまえをしばってあるくさりってやるよ。」
ははざるは、ゆびのつまさきからも、くちびるからもして、とうとうかたくさりってしまいました。そして、ふたりは、たがいにってよろこび、ころげるようにして、ゆきなかやまほうへとげていくのでした。
ゆきうえには、二ひきのさるの足跡あしあとと、ところどころにちたあかのあとがのこっていましたが、かみさまは、この親子おやこをかわいそうにおもわれて、かりゅうどのいかけてこぬようにと、夜明よあがたから、ひどい吹雪ふぶきとなさいました。それで、なにもかもしろになって、あとがわからなくなってしまいました。
しょうちゃんと、かねさんは、あさきてみて、ざるがいなくなったので、どんなにびっくりしたでしょう。けれどおやまかえったとったら、「それは、よかった。」といって、きっと、よろこんでくれたにちがいありません。
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