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子供と馬の話(1)

时间: 2022-11-01    进入日语论坛
核心提示:子供と馬の話小川未明九月がつ一日ついたちの大地震おおじしんのために、東京とうきょう・横浜よこはま、この二つの大おおきな都
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子供と馬の話

小川未明


がつ一日ついたち大地震おおじしんのために、東京とうきょう横浜よこはま、この二つのおおきな都市としをはじめ、関東かんとうたい建物たてものは、あるいはこわれたり、あるいはけたりしてしまいました。そして、たくさんな人間にんげんにましたことは、もうみんなのっていることだとおもいます。いままでうごいていた汽車きしゃはトンネルやレールが破壊はかいしたために、もう往来おうらいができなくなりました。また、毎晩まいばんはなやかなまちらしていた電燈でんとうは、装置そうちこわれてしまったために、そののち幾日いくにちというものは、みやこじゅうがくらになり、よるは、ランプをつけたり、ろうそくをともさなければなりませんでした。
そんなように、いままでつごうがよく、便利べんりであったものが、すっかりくるってしまって、三十ねんも四十ねんものむかしかえったように、不便ふべんなみじめなさまになったのでありました。
こういうめにあいますと、いままで、便利べんり生活せいかつをなんでもなくおもっていた人々ひとびとははじめて、平和へいわのことにありがたみをかんじたのでありました。そして、また、それがむかしのようになるのには、どれほど、おおくの労力ろうりょく日数にっすうとがかからなければ、ならぬかということをったのであります。
わたしたちは、けっして、ひとりでに、このなか便利べんりに、文明ぶんめいになったとおもってはいけません。たとえば、一つのトンネルをるにも、どれほど、おおくのひとたちが、そのためにくるしみはたらいたかをかんがえなければならないのです。
また、電気でんきが、にぎやかな街々まちまちにつくのも、てんでのうちにきたのも、そこには、たくさんなひとたちの労力ろうりょくとそれについやされた日数にっすうがあったことをかんがえなければなりません。
こうして、このなかは、みんなのちからによって、文明ぶんめいになり、つごうがよくゆき、そして平和へいわたもたれてきたのでありました。
けっして、自分じぶんひとりが、どんなに富裕ふゆうであっても、また学問がくもんがあっても、このなかは、すこしもつごうよくいくものでもなければ、また文明ぶんめいになるものでもないことをよくらなければなりません。それをるには、こんどの災害さいがいはいい機会きかいといっていいのです。
それですから、こまっているひとたちをこまらないひとたちはすくわなければなりません。そして、いままでのように、みんなが自分じぶん才能さいのうをふるって、このなかのために有益ゆうえきはたらき、ますますつごうがよくいくようにはやくしなければならないのだとおもいました。
もう一つ、この機会きかいに、わたしたちは、らなければならないことがあります。それは、このなかのためにはたらいているものは、ひとり、人間にんげんばかりでなく、うまも、うしも、よく人間にんげんのためにはたらいているということです。
この、ものをいうことのできない、おとなしい、かわいそうな動物どうぶつを、こころある人間にんげんは、あわれんでやらなければなりません。いじめられるからといっていじめてはなりません。
太郎たろう二郎じろうとは、よく、あさきるときから、よるるまでのあいだに、いくたびということなく、けんかをしたかしれません。それは、ほんとうにたがいににくったからではなく、かえってなかのいいためではありましたけれど、つねにいいあらそうのには、どちらか無理むりなところがありました。
とうさんは、どういったら、二人ふたりがおとなしくなるだろう。どんなおはなしをしてかせたら、にしみてくだろうとあたまをなやましていられました。
あるときのこと、おとうさんは、近所きんじょひとたちといっしょに、夜警やけいをしていられました。なんといっても、まだみんなは、おちつくことができずにいました。そして、火事かじをどんなにおそれていたかしれません、夜警やけいをしなければ、みんながおちついて、よるねむることができなかったからであります。
往来おうらいていますと、れてからも、避難ひなんをするひとれがつづいてとおりました。五人連にんづれになったもの、三人連にんづれのもの、また、二人ふたり、四にんというふうに、いずれも、ぞうりをはいたり、また、はだしになったりして、わずかばかりの荷物にもつって、おとこも、おんなも、ふうなどはかまわずに、たいていはまったくしたままののままで、一こくはやく、このおそろしいみやこのがれて故郷こきょうほうかえろうとするものばかりでありました。そうしたれが、はや幾日いくにちつづいたことでありましょう。
なかには、かれて、もうあるけなくなったのを、おかあさんやおとうさんに、はげまされて、とぼとぼとゆくちいさな子供こどももありました。
このみちとおって、みんなは、汽車きしゃえきほうへとゆくのでした。
「ほんとうに、どく人々ひとびとですね。」と、夜警やけいをしている近所きんじょひとたちが、そのなかでも、子供こどもを三にんも四にんもつれて、みすぼらしいふうをして、さもつかれたようすであるいてゆく家族かぞくのものをましたときにいいました。
やすんでおいでなさい。」
「おむすびも、お菓子かしもありますから、めしあがっておいでなさい。」
夜警やけいをしていた、太郎たろうのおとうさんや、近所きんじょひとたちは、口々くちぐちにこういいました。
すると、つかれた家族かぞくのものは、こちらをいて、ちょっと躊躇ちゅうちょしましたが、ついにまって、
「どうぞ、おむすびを一つ子供こどもらにやってください。」と、父親ちちおやらしいひとがいいました。
「さあ、さあ、たくさんありますから、みんなめしあがってください。」と夜警やけい人々ひとびとはいって、ぼんってきてしました。
子供こどもらは、はらっていますので、みんなおむすびをよろこんでべました。
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