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空にわく金色の雲(1)

时间: 2022-11-18    进入日语论坛
核心提示:空にわく金色の雲小川未明道みちであった、顔見知かおみしりの人ひとは、みすぼらしい正吉しょうきちの母ははにむかって、「よく
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空にわく金色の雲

小川未明


みちであった、顔見知かおみしりのひとは、みすぼらしい正吉しょうきちははにむかって、
「よく、女手おんなでひとつで、むすこさんを、これまでになさった。」と、いって、うしろについてくる正吉しょうきちながら、正吉しょうきちははをほめるのでした。
しかし、こころから感心かんしんするようにせても、じつは母子おやこのしがないらしを、あわれむというふうがえるので、正吉しょうきち子供こどもながら、それをかんじていましたが、ははは、そういって、なぐさめられると、よわくなっているせいか、すぐなみだぐんで、
「なにしろ、三つのときから、一人ひとりそだて、やっと来年らいねん小学校しょうがっこうを、卒業そつぎょうするまでにしました。」と、うったえるようにこたえたのでした。
あいては、もっとちいって、二人ふたり生活せいかつろうとするのを、正吉しょうきちははのたもとをひっぱって、
「さあ、はやくいこうよ。」と、そのから、はなれたのでした。
正吉しょうきちは、そのときだまっていたけれど、自分じぶんははを、きのどくにおもいました。そして、ははのためなら、どんな困難こんなんもいとわないと、こころにちかったのです。
来年らいねんは、ぼく、おじさんのいえへいくのだ。そうしたら、おかあさんは、一人ひとりになって、さびしいだろうね。」と、正吉しょうきちはいうのでした。
「いいえ、さびしいものかね。おかあさんは、はたらいて、はたらいて、そんなことわすれてしまいます。ただおまえが、はやおおきくなって、ひとりちするのを、たのしみとしますよ。」と、ははは、ねっしんにはりをもつをはこびながら、こたえるのでした。
正吉しょうきち学校がっこうからかえると、近所きんじょ武夫たけおくんとさそいあって、はらっぱへあそびにいき、くさうえにねころんでいました。
「だれでも、ほかが、まねのできない技術ぎじゅつをもてば、えらくなれると、先生せんせいがいったね。」と、正吉しょうきち学校がっこういてきたはなしを、おもいだしました。
「ああ、そうだよ。マラソン選手せんしゅとなって、オリンピックでをあげるのも、図画ずががじょうずになって、名高なだか画家がかとなるのも、自分じぶん一人ひとりだけの名誉めいよでなく、やはりくに名誉めいよだと、先生せんせいがいわれたよ。それも、自信じしん努力どりょくすることが、たいせつなんだって。」と、武夫たけおこたえました。
「ぼく、徒競走ときょうそう自信じしんがあるんだがな。」と、正吉しょうきちをかがやかしました。
「そうだ、しょうちゃんは、いつも徒競走ときょうそうでは、一ばんだから、練習れんしゅうして、マラソン選手せんしゅになるといいよ。」と、武夫たけおをたたいて、正吉しょうきちおもいつきに賛成さんせいしました。
正吉しょうきちはきゅうに、からだをおこして、そらをあおぎながら、しんけんにかんがえこんだのです。そして、自分じぶんが、はなやかな世界的せかいてき選手せんしゅとなったのゆめを、にえがいたのです。
「なんで、そんなことを、きゅうにいいだしたの。」と、武夫たけおはふしぎにおもって、きました。
「もし、そうなったら、ぼくのおかあさんが、どんなによろこぶだろうとおもったのさ。だれでも得手えてというものがあるから、それをのばせば、成功せいこうすると先生せんせいがいったので、ぼく、元気げんきて、うれしくなったよ。」と正吉しょうきちは、すなおにこころのうちを、ともだちにうちあけたのでした。
武夫たけおもいつになく、くつろいだもちになって、正吉しょうきちをよろこばせようと、
しょうちゃんはいいだと、うちのおとうさんも、おかあさんも、いっていたよ。しょうちゃんのおかあさんは、いまはくるしくても、しょうちゃんがおおきくなれば、きっとらくをされるだろう。」
こうして、武夫たけお両親りょうしんのうわさしたことをつげようとするのを、正吉しょうきちはうちけすようにして、
「ぼくのうちは、貧乏びんぼうだし、なかなかうえ学校がっこうへいかれない。来年らいねんまちのおじさんのみせ奉公ほうこうして、夜学やがく勉強べんきょうをするつもりだ。たけちゃんは、いいおとうさんがあって、安心あんしんして勉強べんきょうができるから、きっと、えらくなれるだろう。ぼくは、自分じぶんちからだけで、やらなければならないからね。」と、正吉しょうきちは、ぐれがたのそらに、わきあがるくもを、じっとていました。
いま、西にしそらには、ほのおながれるように、あかくもが、うずをまいていました。そして、ほかにもはなびらをらすように、おなじいろくもが、ちぎれちぎれにとんでいました。それが、いつしか、ひとかたまりとなって、たてがみをなびかせた金色きんいろのししの姿すがたとなったり、たかくかけあがる神馬しんめかたちをつくったりして、はるかの青々あおあおとした地平線ちへいせんざして、うごいていたのでした。
正吉しょうきちはしばらく、そのくものゆくえをまもるうちに、空想くうそうは、まち文房具ぶんぼうぐみせへと、とんでいました。ちょうど、金色きんいろくもが、たれさがったあたりに、そのまちはあるのでした。空気くうきとガラスのさかいが、つかないほど、よくふききよめられたまどのうえのたなに、あおくぬられた飛行機ひこうきが、いまにもとびちそうなかっこうで、おいてあり、そのしただいには、まっかな洋服姿ようふくすがたのおどり人形にんぎょうが、片方かたほうあしげてっていました。それは、野原のはらにさくあかいゆりよりも、はなやかであったし、またかわふちでかおる、のばらのはなよりも、にしみるまぶしさでありました。
たけちゃん、きみは、まち文房具屋ぶんぼうぐやにあるおもちゃをた?」と、正吉しょうきちは、そのときぼんやりとして、ならんでいた武夫たけおきました。
「どんなおもちゃだったかな。バットとグローブは、っているけど。」と、武夫たけおは、あたまをかしげていました。
あお飛行機ひこうきと、あかいお人形にんぎょうさんだよ。」と、正吉しょうきちともだちをて、たずねました。
らなかったな。」と、武夫たけおはてんで、そんなものにがつかなかったようです。正吉しょうきちは、やっと安心あんしんしました。もし、武夫たけおがそれをほしいとおもえば、いつでも自分じぶんのものに、することができたからでした。
しばらくして、こんどは武夫たけおのほうから、
しょうちゃん、そんなに、いいおもちゃだったの。」と、きかえしました。正吉しょうきちはそれにこたえず、
「ねえたけちゃん、あの金色きんいろくもをごらん。きれいだろう。そして、あちらのそらをごらん。あのあおいろもきれいだね。ぼく、いままでた、うつくしいものが、みんなにうかんでくるんだよ。」と、正吉しょうきちは、とびつような、自分じぶんこころを、おさえきれなかったのです。

つぎの昼間ひるま、また二人ふたりは、このはらっぱへきました。武夫たけおがわざと三輪車りんしゃはしるのを、正吉しょうきちはそれと競走きょうそうしようとして、素足すあしはしりました。いまにマラソン選手せんしゅになる自信じしんをもとうとして、あやまって、あしゆびをいためました。
ばんになると、そのゆびがだんだんいたみだして、こらえられなくなったのでした。
「どんなに、なっているの。ちょっとせな。」と、ははにいわれると、正吉しょうきちかおは、たちまち、くらくなりました。
「おや、えらく、はれているでないか。」と、はははびっくりしました。こうしたははのおどろきごえは、正吉しょうきちこころを、するどく、むちうって、しばらくあしのいたみも、わすれたのでした。
ふだんから、はは正吉しょうきちにむかって、おとうさんがいないのだから、わたしは、おまえ一人ひとりをたよりにきていると、いわれたのがおもいだされて、後悔こうかいで、むねが、はりさけそうになりました。
「あっ、おかあさん、いたいから、さわらんでおくれ。」と、あしをひっこめようとすると、はは正吉しょうきちのひざがしらに、ふれてみて、
「たいへんなねつだね。今夜こんや、こうしておいて、さしつかえないものだろうか。」と、うろたえるのでした。
正吉しょうきちははがあわれになって、すまぬことをしたとおもいました。
「あすになれば、なおるよ。」と、いって、がまんしながら、ねどこにはいったのでした。
医者いしゃのもとへいったのは、それから二、三にちあとのことでした。
「いままで、おじさんのところへ、おかねのことで、たのみにいったおぼえはないのだが、こんどばかりは、そんなことを、いっていられないのでね。」と、みちすがらははかされたことばは、正吉しょうきちをせめるのでした。
正吉しょうきちは、医者いしゃ自分じぶんあして、なんというだろうか、このうえとも、自分じぶんたちをくるしめることに、なりはしないだろうかと、診察室しんさつしつへはいると、なんとなく不安ふあんに、あしがふるえたのでした。
「なぜ、もっとはやく、せにこなかったのです。」と、医者いしゃは、まゆをひそめながらいいました。
注射ちゅうしゃをしていただいたら、なおりませんでしょうか。」と、はははわがの、うえづかいながらくのでした。
おくれなので、注射ちゅうしゃがきかなければ、手術しゅじゅつをするのですな。そうすると、二、三にち入院にゅういんしなければなりません。」と、医者いしゃはすこしのおもいやりすらなく、ひややかにこたえました。
医者いしゃのところをると、
うちへかえって、この水薬みずぐすりで、あしのいたむところを、ひやしておいで。」と、はは正吉しょうきちとわかれました。正吉しょうきちは、ははのいくさきを、かなかったけれど、たぶん、おじさんのいえへいったのだろうとおもいました。
やがて、がくれてしまい、しばらくたって、はははかえってきました。
世間せけんで、かねもちといわれても、たのんでいけば、かねがないというものです。はじめてだし、こんどだけはようだてするけれど、つぎからは、おことわりだと、きっぱりいいました。おじさんだから、とくべつせわしてくれるとおもっては、いけません。たよりとなるものは、ただ、自分じぶんちからだけです。わたしは、これからも、せいいっぱいはたらくことにします。」と、はははいいました。
正吉しょうきちは、なんともこたえられず、あついなみだが、こみあげるばかりでした。
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