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不思議な鳥(3)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:三雪の上は一面に鈍い光を放って、空は次第に暗くなった。刻々に空は下へ下へと押え付けるような感じがした。彼方あちらにも、此
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雪の上は一面に鈍い光を放って、空は次第に暗くなった。刻々に空は下へ下へと押え付けるような感じがした。彼方あちらにも、此方こちらにも雪を被った幽霊のような木立や、黒い悪魔のような森があった。私は、吉太に遇って、あの黒い鳥を見てから、暗い気持になった。
しかし、又何となく吉太が可哀そうな気持もした。
「あんな悪い児の鳥を貰っていいだろうか?」
と、いうようなかんじもした。また、あの黒い鳥はなみの鳥でない、あの鳥が来てから何か自分の家に不幸が起るようなことがあるまいかとも思った。
「そうだ、あの黒い鳥が来ると、家の者が病んで死ぬのでないか?」と、身が寒気を催した。
してその黒い鳥は、今始めて見たのでない。何処かで一度見たことがあるような気持がした。怖しい処で見た、赤い色と灰色の混った処で見た……何処だろう? 考えると、私の目の前に、河水かわみずに臨んだ赤い煉瓦造れんがづくりの監獄の建物が浮んだ。河には雪やみぞれの固りが水に漂って流れて来る……晩方の景色だ。
「あの黒い鳥を監獄の中で見たようだ。」……雪の上に立止った。自分は生れてから監獄の中へ入って見たことがあろうか……一度でも行って見たことがあったろうか。
「何か悪いことをしたことがあったろうか?」
「何か人の物をすんだことがあったろうか?」
「全く覚えがない!」
けれどこの黒い鳥を見たことがあるようだ……それは幼ない時分であった。日蝕の日に斯様黒い鳥が沢山、空を廻っていたような気がする。何んでも黄色な暗くなった空に、驚いて怪しな声で、ぐるぐると輪をえがきながら啼いていた。大日輪がご病気になられたのだから見ると悪い――その意はこの日に何か人の命にさわる毒が降るともいうので――人の通りが全く杜絶とだえた。木も悲しめば、草も悲しむという。無心の鳥まで悲しむというので、戸口に立て空を見た時、雲は悪熱おねつで煮えるように薬色となっていた。よく熱病になった時土用のうしの日にとっほして置いたどくだみ草を煎ずるとこういうような色になる。しその水を飲んで命があるものならどんな重い熱病もなおるが、死ぬものなら身体がやはりどくだみ草の色とって死んでしまうと聞いた――この時、黒い鳥が空を幾羽となく飛んでいた。その黒い鳥は余り大きくなかった。無論烏ではなかった。その啼声は物に驚いたような、目が見えなくなったような、巣のを忘れたような、呻吟うめくような、もだえるような、切なそうな啼き声であった。私はこの黒い鳥の啼声を聞いたとき、もう二度と太陽は現われずに、こうなってこの世がいつまでも夜になってしまうのであるまいかと思った。若しそうなったらうなるだろう。人は外へ出て働くこともならず、木は、草は、あのように薄暗い、飴色の空の下に悲しそうに立っている。彼方の家もあのように黒く、この厭らしい黄色な空の下に動かずに浮き出ていて、すべてが黄色な空の下におしのように音なく黙っている……何時までも何時までも黙っている。ただ見るものは、飴色の空に折々悪夢のような形の定まらぬ雲が出たり、消えたり、のろく鈍く動いているばかり。而してこの黒い鳥が、やはり厭な斯様声で啼きつづけているだろう。けれどいつかこの黒い鳥も羽が疲れて地面じびたに落ちてしまい、厭な声も次第に疲れてれてしまうだろう。そうすればこの世は全く声というものが絶えてしまう。犬も死んでしまえば、にわとりも死んでしまう。全く生物の声は絶えてしまう。……けれど最も最後まで啼いているものはこの黒い鳥であるというような気がした。その時、地球の上に風が吹くだろうか?……やはり吹くかも知れない。けれどそれは冷たい、氷のような風である。あの悲しい木や、草に当る時、いたましい音を立てるだろう。そうなったら雨が降るだろうか……雨というものは降らないかも知れない。
「この日蝕はいつまでつづくだろう……。」と私は気を揉み始めた。幾日もこの儘であったら、人は燈火あかりともしつづけて、いつか油も尽きてしまうだろうと思った。……このとき家の内では燈火をけた。空ではやはり黒い鳥が啼きつづけていた。
「あの、鳥は何という鳥でしょうね。」
と、隣でいっている声がした。
「燕でしょうか?」と、誰かいう。
「燕にしては、啼声が違うや。」と、これは子供の声である。
「不思議な鳥が出たものだな。」と、老人の声がする。
「大変に暗くなりましたね。」と、女の声だ。
「厭な啼き声だこと。」
「あの黒い鳥。」
「幾羽居るだろう……。」
などという声がした。

*      *      *

空は漸々だんだん暗くなって来た。雪がまたふって来そうになった。私は銃をかついで家へ急いだ。
「あの黒い鳥を貰ってもいいだろうか。」……吉太が可哀そうだというような考えも起った。
その晩は何となく暗い思いがしたが、あくる朝になって絵具皿を探し始めた。
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