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古いはさみ

时间: 2022-12-11    进入日语论坛
核心提示:古いはさみ小川未明どこのお家うちにも、古ふるくから使つかい慣なれた道具どうぐはあるものです。そしてそのわりあいに、みんな
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古いはさみ

小川未明


どこのおうちにも、ふるくから使つかれた道具どうぐはあるものです。そしてそのわりあいに、みんなからありがたがられていないものです。えいちゃんのおうちのふるいはさみもやはりその一つでありましょう。
えいちゃんの、いちばんうえのおねえさんがちいさいときに、そのはさみでがみったり、また、お人形にんぎょう着物きものつくるために、あかきれむらさききれなどをるときに使つかいなされたのですから、かんがえてみるとずいぶんふるくからあったものです。
その時分じぶんにはこんなくろいろでなく、ぴかぴかひかっていました。そしてもよくついていてうっかりすると、ゆびさきをったのであります。
「よくをつけて、おつかいなさい。おててをりますよ。」と、おかあさんが、よく、ご注意ちゅういなさったのでした。
ねえさんは、おちついた性質せいしつで、お勉強べんきょうもよくできたかたですから、めったに、このはさみでゆびさきをるようなことはしませんでした。使つかってしまえば、はこなかに、ちゃんとしまっておきました。
ねえさんが、まだとおか十一のころです。あるのこと、
「あれ、なあに。」と、ふいにおかあさんにききました。
「なんですか。」と、おかあさんは、おわかりになりませんでした。
「アカギタニタニタニって?」
「あああれですか、はさみ、ほうちょう、かみそりとぎという、とぎさんですよ。」と、おかあさんはおわらいになりました。
わたしっている、はさみといでもらっていい。」と、おねえさんがききました。
このときの、アカギタニタニタニがいつまでもおうちわらばなしたねとなりました。
「ほら、アカギタニタニタニがきましたよ。」と、とぎさんが、まわってくると、おかあさんがわらっておっしゃいました。それからいくたびこのはさみは、とぎさんのにかかったでしょう。
ねえさんは、女学校じょがっこう卒業そつぎょうなさると、おはりのけいこにいらっしゃいました。そのときには、このはさみは、もう、そんなやくにたたなかったので、あたらしい、もっとおおきなはさみをおもとめになりました。そして、いままでのはさみは、平常ふだん、うちのひと使つかようとされてしまいました。けれど、ちょうど、えいちゃんのうえにいさんが、いたずらざかりであって、このはさみで、ボールがみったり、またたけなどをったりしたのです。
けれど、はさみは、不平ふへいをいいませんでした。あるときは、縁台えんだいうえわすれられたり、またつめたいいしうえや、まどさきにかれたままでいたことがありました。そんなときは、さすがにさびしかったのです。
「はやく、おうちへはいらないと、らぬひとにつれられていってしまうがな。」と、ほしひかりをながめて心細こころぼそおもったことがありました。
「また、はさみがえませんが、どこへいったでしょう。」と、あくるあさ、おかあさんが、つめをろうとして、はさみがつからないので、こうおっしゃいました。
「きのうまで、はこなかにはいっていたんですよ。また、太郎たろうさんが使つかって、どこかへわすれたのでしょう。」
ねえさんは、方々ほうぼうおさがしになりました。そして、子供こどもたちがあそぶごもんいしうえいてあったのをつけなさいました。
「まあ、こんなとこにいてあって、よくひとひろわれなかったこと。」
そういって、おねえさんは、子供こども時分じぶんからのはさみをなつかしそうに、ごらんなさいました。すると、った記憶きおくがつぎつぎとかんできたのです。
ながくあるはさみね、だいじにしなければならないわ。」
ねえさんは、なくならないように、あかいひもをはさみにおつけになりました。
しかし、はさみは、もうとしをとって、たいしたやくにはたちませんでした。
れない、はさみだなあ。」と、太郎たろうさんが、かんしゃくをこしてたたみうえしても、はさみは自分じぶんれないのをよくっていましたから、がまんをして、あきらめていたのであります。そしてこのごろは、げたの鼻緒はなおてたり、つめをったりするときだけにしか使つかわれなかったけれど、としとったはさみは、わかいころ、おじょうさんが人形にんぎょう着物きものをつくるときに、うつくしい千代紙ちよがみや、がみったり、また、おかあさんが、お仕事しごとをなさるときに使つかわれた、いくつかのはなやかなおもかべて、せめてものなぐさめとしていたのでした。
あるときのことです。いつもの、とぎさんがやってくると、
「アカギタニタニタニがきた、はさみといでもらっていいでしょう。」と、太郎たろうさんは、おかあさんにいいました。とぎさんのことを、いつか、アカギタニタニタニとしてしまったのでした。
かあさんが、いいとおっしゃったので、とぎさんにたのむと、おじいさんは、しみじみとはさみをながめて、
「もう、ふるくなって、こしがよわくなりましたから、といでもそうれませんよ。」といいました。人間にんげんおなじように、はさみのこしがまがって、よわってしまったのでした。
ちょうどその時分じぶん、いちばんちいさいえいちゃんが学校がっこうがりました。そして学校がっこう手工しゅこうにはさみがいることになりました。
えいちゃんがっていくのに、ちょうどあぶなくなくてこのはさみがいいでしょう。」と、おかあさんが、あかいひものついているはさみをおしになりました。
はさみはまた筆入ふでいれのなかにいれられて、そのえいちゃんのおともをすることになりました。おうちひとはこのはさみならとみんな安心あんしんしていました。なんでもすべてふるくからのものには、こうしたあい安心あんしんしたしみがあるものです。
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